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遥かなる星の後
第4話 : 刻星病・中編
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るだけ……陶芸の世界はとても狭い。ので、一般の人には理解が及ばない部分も多くありますから。おじいちゃんが正しく評価されるには、多くの時間がかかったそうです。『どんな名器を作れても、良さを伝えられなきゃ一般人にはガラクタだ』そう呟いた事を今も覚えてます。
  その時の横顔は長い年月によるシワと共に沢山の苦労が刻まれてると、子供ながらに感じました……ですから大人しく承諾しますでも……プロダクションに所属すると同時に私は船橋さんに出会いました。
 今とは比べようも無いぐらいに無表情で冷たい瞳をしてた船橋さんに。その時はとても鋭利な目をさらに細めて私を見てきました。それは観察と言うよりは分解でしたね。藤原肇の一つ一つをバラバラにして検品するような怖い瞳……
明らかに他のプロデューサーとは一線を隠した異質さ……それでも不思議と怖さは感じましたが不快さはありませんでした。それは、船橋さんなりの本気で藤原肇を理解する為の行為だったからです。

 この話の例を上げれば……そう宣材写真を撮ったときです。

 私はアイドルとして、可愛くてきらびやかな服を選びました。
  とても着れ慣れてない服。自分らしさからは程遠くて、でも、アイドルと言う憧れを目指すには我慢するべきと思っていました。その時に船橋さんが言った言葉は『君はアイドルに成りたいのか?それともアイドルの仮面を被りたいのか?』でした。
目から鱗とはこの事ですね。私は……自分をアイドルと言う職業で表現したいと思ったのに、自分の信念を置いて行こうとしたのです……
  宣材写真とは、自分のアピールポイントを知ってもらう物。ならば藤原肇の信念と原点を表現しなくてばなりませんね。 私が宣材写真に選んだ服はいつもの臙脂色の作業衣です。可愛くなくても、泥臭くても、この姿が私の始まりでもあり帰るべき姿でもありまから。
 これを着れば気持ちが引き締まります。そんな私を見て初めて船橋さんが優しく笑ってくれました。

 この人だったら、私を導いてくれる。

 その時に確信しました。私が見過ごしそうになった私を指摘してくれた人。
  それだけでも十分なのに、プロデューサーとしての立場なら作業衣よりも可愛い衣装の方が営業には向いてるのに、あえて藤原肇の意思を尊重してくれた……なら、私はこの人に身を任せても良いと思います。
  それから約半年。なんて短く感じた日々だったでしょうか。船橋さんともに駆け抜けて、そして正式なプロデューサーとなってくれて……
あぁ、胸のドキドキと未来へのワクワクが止まりません。これか先、私はどんなアイドルとなって行くのでしょうか?
それはまだ分かりません。でも船橋さんがプロデューサーで、共に歩んで行けるならば……それはとても素敵な事。


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