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少年と女神の物語
第百十六話
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「ほぅら、どうした神殺し!妾を殺すのではなかったのか?」
「ハッ、ろくな攻撃もできてねえ奴がよく言えたもんだな!」

 狂気の女神と、九人目の神殺し。両者の戦いはまつろわぬ神と神殺しの魔王のものというより、獣と獣の争いという方が近いものであった。
 争いに関わる神ではないアテは磨き上げた技量を持って。武双と共に鍛え上げた技の数々を無意識のうちに繰り出し、聖槍(ロンギヌス)で相手を抉らんとする。
 争いこそを本能的に望む神殺しは、ただただ本能的にティルヴィングで切りかかり、防ぎ、そして要所的に残っている二つの権能を一瞬使うことにより戦いを成り立たせている。

 先ほどまでとは違い、より一層神と神殺しらしい戦い。余計な考えなんてものはなく、ただ本気で相手を殺そうとして技をふるう。槍による刺突は心臓や脳といった主要部ばかりを狙い、そして刺突の瞬間に最も狂気が濃くなる。もし仮にあたったのならその瞬間に狂い死ぬのではないかと疑ってしまう。そんな攻撃を連続で繰り出されているにもかかわらず、神殺しの方が浮かべているのは笑みである。だがしかし、それも仕方ないのかもしれない。

 彼にとっては、これまでのどの神との戦いよりもこの戦いこそが心躍るものであった。初の神殺しよりも、実体のない幽鬼との争いよりも、黄金の魔剣を持つ王との戦いよりも。
 今目の前にいる、ただ狂気しか持たない女神との争いに心躍っているのだ。これまでの神との争いは何だったのかと。そう問いたいと考える程には彼はこの戦いを楽しんでいる。

「我は流れを制御する!力の流れ、その勢いを抑え」
「ほう、妾を前になお権能を使うとは」

 しっかりと使おうとすれば狂わされるだけ。そんな状況でまだ使うなどという愚行にも思えるそれを見てアテは呆れ半分に狂気を流し込もうとするが。

「そしてそれは、解放される!」

 それより一瞬早く、神殺しの方が権能を開放した。
 ヴォジャノーイの持つ化身の一つ、水門。その効果は自らの力の完全制御とチャージを開放することによる強大な一撃。が。

「・・・ほう、中々面白いではないか」
「オイオイ・・・女神様よ。アンタら神の権能ってのは、そこまで無茶苦茶なのか?」
「いや、それはない。むしろこのような応用は、お主ら神殺しのものぞ」
「じゃあ、なんでベクトルを狂わせるなんてできてやがんだよ」

 それは、向かう方向が狂ったことで避けられてしまう。

「身近に神殺しがおるのでな、少々工夫できないかと試してみたのだ」
「んだよそれ、神様が向上心とかありえねえだろ!」

 そう言うものの、より楽しくなったと考えたのか彼の口は笑みを作る。今回、アテは自らの権能たる狂気と武双の権能で補強されている聖槍(ロンギヌス)を用いて間にある空気を狂わせ
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