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遥かなる星の後
プロローグ : 新人には理不尽な難題
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 アイドルとは何か……?

 夢をくれる存在?
 仮想の恋人?
 理想の偶像?

 あるいは金の為の歯車……?

 人により答えは様々だろう。
 賛否両論、好きな人も居れば嫌う人も居る。
 俺は……好きだ。

 いや……とあるアイドルが大好きなんだ!


 まだ幼い頃。嫌なことがあって家から飛び出したあの日。
 どこかも分からず逃げ走った場所で、出会ったアイドル。

 夕日が町を染めるなかで、ビール瓶ケースを舞台に歌って踊って、滑り落ちたアイドル……


 弱くて、世間知らずで、馬鹿なクソガキに笑顔をくれたアイドル。

 俺の、俺にとってのアイドルとは、その人だ。
  名前もどこの所属かも聞けなかったけど、その顔も声も存在も俺は覚えている。


 変わらぬ思い出。

 宝箱に終い込んだ、大切な記憶。


 もう一度会って、そのアイドルにお礼を言いたい。そして、その人と交わした約束を守りたい。
 その為だけに、俺は芸能界に足を踏み入れたんだ……


 それは、天高い空の星に手を伸ばすように愚かな事だけれど……

 それでも、俺は……遥かなる星の後を追い続ける。



 ***


 アイドルプロダクションに入社して、一年が経過した。
  昨日をもって新人研修が終わり、晴れて俺は正式なプロデューサーになれた。
 研修は過酷を極めて、早朝から深夜まで続き、しかも現場に直接ブチ込まれる鬼レベル……
  数人はいた同期は瞬く間に消え去り、気が付けば自分が最後の1人になっていた。
 俺が根性があったのか、同期が根性無しだったのか。
 はたまた……この事務所がブラックだったのだろうか……



 正解はーーーー



「……我が社はブラックですね、わかります」

「え? 何の事ですか?」


 いけしゃあしゃあと、緑の悪魔と呼ばれている(らしい)事務員の千川ちひろさんはキョトンとして言を返す。
 この人はアイドルでも無いのに、非常に目麗しい容姿をしている。肩に垂らした大きな編み込みの髪型もキュートだ。

 チクショウ……なんか可愛くて許せそうだ……
 でもここで折れてはいけない!


「昨日研修を終えたからと、「じゃ、担当するアイドルをスカウトしてこいよ〜」って、ブラック過ぎるでしょうが!」

「はぁ……ブラックですかね?」

「……ブラックじゃないと思うんですか?」

「社長は『研修終わったんだろ?ならダイジョーブ、ダイジョーブ』って言ってましたよ?」

「」


 言葉も出ない、いわゆる絶句を体験するとは……
 ブラック会社オソロシヤ……


「まぁ、社長は自力でこのプロを立ち上げて、今の規模
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