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藤崎京之介怪異譚
case.3 「歩道橋の女」
〜 epilogue 〜
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々と演奏会を行ったそうだが、そのどれもが満席だったというから驚きだ。
「宮下教授はバロック音楽の権威ですからね。スポンサーに天宮さんが加わってるのなら、まず空席が出るなんてことはないですから。」
 田邊は苦笑いしながらそう言った。ま、その通りだがな。
「それで先生。行脚姫の祠ですが、草織神社には無かったんですよ。」
「道路中央の花壇の下から出てきたんだろ?」
「え?知ってたんですか!?」
「気付かない方がおかしいだろ?あの歩道橋から転落死した全員があの花壇に落ちている。あの意味のない花壇の上に…。」
 あれは意味というよりはカムフラージュだったんだろう。あんな道のど真ん中に花壇を作るなんて、通常は有り得ないからなぁ…。
「それで、その見つかった祠はどうしたんだ?」
「あ…はい。祠は草織神社の神主が祝詞を上げ、丁重に神社へと移して御神体にしたそうです。」
「そうか…。やっと帰る場所が出来たんだな…。」
 俺はそう呟くと、また深い眠りへと落ちたのだった…。

 今回の一件も、例によって天宮氏が闇へと消した。この現代社会において、霊による大惨事が起きるなんて誰も考えちゃないからな。
 しかし、全てを無視して旧きものを破壊し、他人の心を踏みにじり続ければ、その結果は散々たるものであり、またその代償も計り知れなくなる…。

 人間とは、とても弱い生き物だ。しかし、その心は時として、強く時代の中に生き続ける。だから、俺はあの場所であの曲を選択したんだ。

 バッハ作曲、カンタータ第五十四番「罪と戦え」を。

 時々思うことがある。いつの時代も、人間は罪と云うものに抗い続けなくてはならないのかと…。
 愛と哀しみが表裏一体であるように、善と悪もまた、光と陰のようなものかも知れない。光がなくては陰はなく、陰がある故に光は一層の美しさを認識させる。
 どちらが良いとは言わない。


 結局それを選ぶのもまた…人それぞれだからな…。



      case.3 end





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