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藤崎京之介怪異譚
case.3 「歩道橋の女」
V 同日 am10:43
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とも否めない。
 とは言っても、しかし…。
「なんでヘブライ文字なんだ?ラテン語で充分な筈だが…。」
「そうですよね…。大半の魔法陣はラテン語ですからね。先生、でもこれって魔除けに似てませんか?」
 田邊の言葉に、俺は首を捻った。
 確かに、五芒星には魔除けや護守の役割も与えられているのは知られているが、それは“守る”というものであって結界のようには…。
「そうか!だからヘブライ文字にしたのか!」
 俺がいきなり声を上げたので、田邊が驚いて目を瞬かせた。
「先生、何か分かったんですか!?」
「まぁな。じゃ、残る四ヶ所も回るとしよう。必ずこれと同じ文字違いのものが見つかる筈だ。」
 俺はそう言うと、田邊を引っ張ってタクシーへと戻った。
 残りの四ヶ所を時計回りに近代美術館、薔薇園、市民公園、天光寺の順に回った。そこには予想通りのものがあり、俺の考えを裏付ける証拠となったが、ただ一つ、予期しなかったことがあった。
「先生…、これって…。」
「そうだな…。この一角がこれによって崩れたため、佐藤神父は…。」
 ここは天光寺に続く石段だ。その一つに例の印が書かれていたが、誰の仕業かそこに煙草を押し付けて消した後が残っていたのだ。
「しかし、先生はこの手のものは使いませんよね?なぜ結界だなんて思ったんですか?」
 田邊がそうに聞いてきたので、俺は溜め息を吐いて答えた。
「以前に同じようなことがあったからな…。」
 俺はそう言うと、「飯食いに行こうか。」と言って話を切り上げたのだった。田邊も「そうですね。」と答えただけで、後は黙ったままだった。
 俺が以前に目撃したものはラテン語だった。しかし、使用目的が全く違ったのだ。
 それは“呪い”のために使用されていたもので、それに巻き込まれた俺の知人が死んでしまった…。。
 その事件の時の頃に、あの相模英二と知り合ったのだが、この話はまた別の機会に語るとしよう。

 タクシーで街中まで戻ると、俺達は遅い昼食を済ませ、もう一度あの歩道橋へと向かうことにした。場所も近くなため、今度は徒歩での移動になった。
「あ、田邊君。みんなは明日には入れるか?」
 俺は歩きながら聞くと、田邊は手帳を取り出して答えた。
「そうですねぇ…。コーラスは明日の午後到着予定ですが、オケは明後日になりますね。どうしてですか?」
 田邊がそう聞くのも無理ないな。主催者である佐藤神父が亡くなってしまった今、演奏会どころか街の楽団の指揮の話もお流れだしな…。
 だが、一つだけやらなければならないことがある。
「佐藤神父の葬儀と追悼演奏会をする。勿論、追悼演奏会にはこの街の楽団を採用して壮大に行うつもりだ。」
 それを聞いた田邊は、いきなり立ち止まって俺に言った。
「無茶ですよ!いくらなんでもこんな短期で
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