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ドリトル先生と森の狼達
第二幕その七

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「疎いよね」
「それでも世間知らず過ぎるところあるけれど」
「けれど僕達がいつもいるから」
「世の中のことはね」
「あまり知らないよね」
「そうだね、経済とかも専門じゃないし」
 先生はこちらの経済については疎いみたいです。
「世の中のことは」
「クリーニングとかについても」
「あまりなのよね」
「知識がなくて」
「全部私達がやっていて」
「先生は、だから」
「これじゃあ駄目かな」
 先生は自分を振り返ってこうも言いました。
「やっぱり」
「いや、いい人がいればね」
「いいよ」
「先生がどれだけ家事が駄目で世の中のことに疎くても」
「それでもね」
「いい人がいればね」
「うん、僕にはトミーがいて皆がいて」
 こうした人達が先生が思う『いい人』です。
「本当に幸せだよ」
「ああ、だから違うんだよ」
「僕達確かに先生の家族だけれど」
「けれどね」
「この場合のいい人っていうのは」
「また違うから」
「他のことを言ったんだけれど」
 皆はお風呂の中でも呆れました、空気がとても奇麗で外に何処までも連なる山々が見えているその露天風呂の中で。
「やっぱり先生はね」
「こうしたことは疎いね」
「どうしてもね」
「難しいね」
「先生は源氏の君にはなれないね」
 王子もお風呂の中で笑って言いました。
「やっぱり」
「源氏物語だね」
「うん、先生は違うね」
「源氏物語は素晴らしいね」
 先生は文学についてはです、すぐにこう言えました。
「あの雅な王朝文学もまた日本の素晴らしさの一つだよ」
「読んだことはあるんだ」
「原文でも現代語訳でもね」
 そのどちらでもというのです。
「読んだよ、現代語の方は谷崎潤一郎をね」
「凄いね、あれを日本人でない人が読むなんて」
「そうなのかな」
「うん、あの本はそうは読めないよ」
 それが源氏物語だというのです。
「長いし登場人物も多くて」
「あと文章も独特だね」
「それは現代語の方?」
「いや、谷崎潤一郎の文章は読みやすいよ」
「じゃあ原文の方だね」
「紫式部の文章は独特なんだ」
 古典の文章の中でもというのです。
「あの人の文章は難しいんだ」
「へえ、そうなんだ」
「だから難しかったけれど」
 読んでいくことがというのです。
「面白い作品だったよ」
「全部読んだんだね」
「宇治十帖もね」
 こちらまでというのです。
「読んだよ」
「流石先生だね、けれどね」
「僕は源氏の君にはなれないっていうんだね」
「どうしてもね」
「あの人は凄い人だよ」
 先生は源氏の君を少し実在の人の様にお話しました。
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