交渉 3−2
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禁断の森にて、番犬ファングと動植物の採取を続けていたのだが、ファングの様子と雲行きが怪しくなっていた。
森の奥に進む度に吠えられてしまい、採取どころではなくなっていた。
まだ月が昇って間も無いというのに......。
仕方がない。ここら辺で中断するとしよう。それにしても、こんな様子でよく番犬が務まるな。まあ、ルビウスの飼い犬になってしまったのが運のツキだな。
「......分かった。帰るよ」
口から「ぶっ殺すぞ」などと物騒な言葉が出そうになるのを抑えつつ、森から出る道を進む。木々の隙間から満月の月明かりが照らし、いい具合に道標となっている。
残念なのは、隣にいるのが弱虫の番犬である事だけだ。
ーーふと、何かが聞こえた。
......獣の、鳴き声......?
おかしいな...。
この森に入ってから敵対しそうな生き物だけに殺気を放っていたのに、この獣の鳴き声はそれらとは異なる...が、明らかに敵対心を剥き出しにした声だ。ならば、この声の主は?
森の生物ではない獣......。
「ファング。お前は先に帰れ。夜が明けても俺が帰らなかったら、爺様に知らせろ」
ウオゥッ!
ファングの鳴き声は喜々としていた。
駿馬の如く駆け抜けて行く姿を見送り、あれが脱兎でなければなぁ...などと考えながら鳴き声がした方へ足を向ける。俺の殺気を物怖じしない生物をこの目で見ておきたいと思ったからだ。
さて、森の木々たちの声に耳を傾けてみようか。
ーー......ォォ...ォォォ......ン...。
森を進む度に、鳴き声が近付いているのが分かった。
この鳴き声は狼に似ている。
「......やはり、お前か...」
俺が声を掛けると、鳴き声の主は吠えるのを止め、こちらを見る。
歪な体。獣のようで人のような姿。大きく裂けた口からは唾液で濡れた長い舌が垂れ下がっている。
月明かりに照らされ、そいつの姿が顕になる。
「人狼......。リーマス・J・ルーピン...だな」
確か、こいつは俺と同じ新入生。幼い頃に別の人狼に噛まれ、同じく人狼になったと聞く。まさか、こんなにも早く接触出来るとは思ってもみなかったが、これはこれでいい機会だろう。
「お前、その姿の時でも人間の言葉が分かるのか?」
「グルルルル...」
「警戒しているな。賢い判断だ。俺を八つ裂きにしたいか?」
「ガゥルルル......ゥゥゥ...」
「言葉は通じているようだな。頭もいい。俺に手を出さないだけ冷静だと言える」
だが、それもあと何年かすればコントロールが効かなくなるだろう。
これは好都合だ
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