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渦巻く滄海 紅き空 【上】
八十八 初戦・参戦・国境線
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とえ未完成であっても次郎坊の【土陸返し】の土壁を容易に突き崩せる事から、その威力の凄さが窺える。
(まだ、これじゃ…【螺旋丸】とは言えないってばよ)


「なんだァ、今のは…?術の成りそこないか?カスが」
余波を受けて吹き飛ばされた次郎坊が立ち上がってくる。未完成の術だと即座に察した彼の暴言に、ナルは唇を噛み締める。
以前自来也が見せてくれた【螺旋丸】は、相手を一瞬で気絶させるほどの威力があった。
最大威力を誇ったままの乱回転を一定の大きさに留める。それが出来ないままでは【螺旋丸】は完成しない。


「……知ってるか?」
悔しげに唇を噛み締めるナルに、次郎坊は突然問い掛けた。
「人間五人も集まるとな。必ず一人、クズがいる。そういう奴はいつもいつも馬鹿にされてよぉ。いざという時は真っ先に捨て駒がお決まりだ…」

唐突に始まった次郎坊の話。そこで言葉を切った彼は顎を軽く上げ、見下すような視線でナルを見据える。
「…お前のことだよ」

けれどその実、彼の口調はまるで次郎坊自身が捨て駒だと認識しているような。
そんな物言いであった。


「大体最初に残る奴ってのは、弱いって相場が決まってるんだ。捨て駒扱いのカスだってな」
「……確かにオレってば、『落ちこぼれ』って言われ続けてきた」
次郎坊の嘲りに、意外にもナルは反論しなかった。むしろ肯定する。

「けど、オレが残ったのは仲間に言われたからじゃない。オレ自身で決めたことだってばよ!それにな、」
そこでナルはにこり、と自信たっぷりに微笑んでみせた。

「仲間を大切にしない奴なんて、木ノ葉にはいないってばよ!!」


あまりにも潔いその啖呵に、次郎坊のほうが怯んでしまう。無意識に後退した足首は、次の瞬間何者かに掴まれた。
「なっ!?」
「【土遁・心中斬首の術】!!」
真下からにょきっと生えた手首が次郎坊の足首を掴む。
そのまま地中に引き摺りこまれそうになり、彼は慌てて踏ん張った。力を込めれば、逆に次郎坊の怪力で引っ張られた相手が地面から引き摺りだされる。


だがそれは、一人ではなかった。


「なんだと…っ!?」
「悪いけど、一気に決めさせてもらうってばよ!!」
次郎坊を今正に地下へ引き摺り込もうとしたのは、ナルの影分身達。
当初、次郎坊に投げ飛ばされた彼女は印を秘かに結んでおいたのである。
いつもならすぐに使う【影分身】をナルは逆に奥の手として取っておいたのだ。

幾人ものナルが次郎坊の身体を地下に引き摺り込もうとする。流石の次郎坊も、何十人以上もいるナルからの攻撃に対処出来ない。
それでもなんとか抗おうとしたその瞬間―――。

「――――【螺旋丸】!!」
トドメとばかりに、本体であるナルから【螺旋丸】を喰らった。
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