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オラリオは今日も平和です
ハーフエルフの日記
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少女の言葉を聴く筈もなく、私は頬を叩かれ、あっさりと壁まで吹き飛ばされる。

 簡単に吹き飛ばされた私は壁にぶつかり、床に倒れこむ。冒険者はそのままズンズンと倒れている私に近づいて来て、右足を振り上げた。
 足を振り上げる動作を見て、蹴られると思った私は、咄嗟に瞳をギュっと瞑って、襲ってくる痛みに耐えようとする…………が、痛みが私を襲うことはなかった。

 不思議に思った私は、恐る恐る瞳を開くと同時に、思わず顔が熱くなるのを感じた。まるでタイミングを見計らってたように颯爽と現れた彼は、冒険者の蹴りを左足でいとも簡単に止めていたのだ。私達ギルドの職員は他のファミリアとは違って、【神の恩恵】を授かっていない。にも関わらず、彼は第三級冒険者の攻撃を止めていた。

 よく見ると、彼は左足で冒険者の蹴りを止めていたが、反対の右足で軸足を踏みつけ、蹴りの威力を押さえた上、膝をクッションのように使い、完璧に蹴りの威力を消していた。

 彼は左足で冒険者の蹴りを止めたまま、「どうされましたか?」と笑顔で尋ねていた。いや、正確には口元こそ笑っていたが、瞳は笑っておらず、得体の知れない威圧感が出ていた。

 そんな彼の態度に、冒険者は益々腹を立てたようで、すぐさま拳を突き出し、彼の顔を殴ろうとした。しかし彼は上体を低くしてソレをかわし、続けて繰り出されるラッシュも全て避けていた。
 一切の無駄がない回避術に私が見惚れていると、彼が何か数字を呟いていることに気がついた。「2、3、5、7、11、13、17………」と、不規則ながらもどんどん増えていく数字に私は首を傾げるが、すぐに理解することになった。

 ソレは彼が冒険者の攻撃を避けて、反撃できる回数だった。私の目にはまったく見えることがない攻撃のため、中途半端に飛ばされながら数えられている数字も納得できたし、彼が数字を数えていくたびに冒険者の顔が青ざめていくことが何よりの証拠だった。

 さらに彼は反撃のチャンスがあるにも関わらず、一度も攻撃はしていない。そのことがより一層恐怖感を煽ったのだろう。とうとう冒険者は悲鳴を上げながらギルドの外へ逃げ出していった。


 そして訪れる静寂。しかし次の瞬間には拍手と歓声の嵐。職員たちが一斉に彼の元へと駆け寄り、感謝の言葉を投げかける。
 
 ここに来てようやく彼はいつものニコニコとした表情となった。私も立ち上がってお礼を言おうと思ったのだが、忘れていた痛みが再びやってきて、私は意識を失った。


 そして翌日、目が覚めた私を待っていたのは、やたらとフカフカなベッドと、傍に備えてある椅子で器用に眠っている彼だった。どうやら私は彼の家で寝ていたらしい。つまり使っていたベッドも彼の物。そこまで考えて、私は顔を真っ赤に染めた。
 慌てて眠っている彼
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