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ドリトル先生と森の狼達
第二幕その三
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「日笠さんは特にね」
「いや、友達は贔屓したら駄目だから」
「友達というよりか」
「?日笠さんは僕の友達だよ」
「そういうのじゃなくて」
「ううん、先生はどうも」 
 トミーも気付かない先生に困ったお顔です。
 そしてその困ったお顔で、でした。王子に言いました。
「春はまだまだ先ですね」
「今の季節が春じゃないのかな」
「違います、春は春でも」
 その春はといいますと。
「先生の春です」
「だから僕は春を楽しんでるよ」
「そう仰るならいいですけれど」
「二人共何を言ってるのかわからないけれど」
 先生の周りの動物の皆も王子とトミーが言っていることがわかるのでやれやれですが先生だけは気付かないまま応えます。
「とにかく泊まる先は決まったよ」
「十津川村のホテルだね」
「八条グループの保養施設の」
「そこに予約を取ってもらったから」
 他ならぬ日笠さんにです。
「行こうね、その日になったら」
「そうだね、ただね」
 ここでまた王子が先生に言いました。
「ここから奈良は距離があるし」
「南部になるとだね」
「相当にあるから」
 だからだというのです。
「早いうちに出ようね、朝の」
「それがいいね」
「電車で行くのかな」 
 王子は先生に交通手段も尋ねました。
「やっぱり」
「いや、吉野までは電車があるけれど」
「そこから先はなんだ」
「八条鉄道でもね」
「そんなに凄い場所なんだね」
「奈良県南部はね」
 まさにそうだというのです。
「何度も言うけれどね」
「日本で電車が通っていない場所って」
「凄いですよ」
 王子もトミーも驚いています、そのことに。
「日本は世界屈指の鉄道大国なのに」
「その日本で電車が通っていないんですか」
「それはまたね」
「あらためて凄い場所だってわかりました」
「それが十津川村だよ、そしてね」
「奈良県と和歌山県の境」
「そうなんですね」
 二人もそのことを再び認識してしみじみとなって言いました。
「僕達はそこに行くんだね」
「そうするんですね」
「そうだよ、吉野までは電車で行って」
 先生はその行く予定をここでお話しました。
「そこからはバスだけれど、それはね」
「皆がいますから」
「うん、老馬とオシツオサレツがね」
 先生は彼等を見ました、今も研究室の中にいる。
「彼等のことがあるね」
「僕達を連れて行ってくれることは有り難いけれど」
「バスにはね」
「僕達は乗れないよ」
「そう、だからね」
 バスはとです、先生はあらためて言いました。
「バスは止めておこう」
「そうしましょう、じゃあ何を使って行きますか?」
「ううん、どうしたものかな」 
 トミーの問いにもです、困った顔で応える先生でした。

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