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うわん
第一章
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                       うわん
 真中喜椎人は友人の此花庄汰にクラスでこんな話をされた。
 喜椎人は黒髪をやや無造作に耳が見える位の長さで切った髪に薄めだが「しっかりとした一文字の眉を持つやや下顎が出た顔の青年だ、目は小さめで澄んでいる。背は一七〇程で通っている高校の黒い詰襟の制服が似合っている。
 庄汰はかなり細長い顔で鋭い細い目をしており鼻立ちは整い唇は小さく引き締まっている。髪の毛は黒く女の子で言うボブだ。背は一八〇程ですらりとしている。
 その庄汰がだ、喜椎人に言うのだ。
「あの妙三寺にな」
「夕方の五時半に行くとなんだ」
「違う、傍を通るとなんだ」
 庄汰はここを訂正させた。
「寺のお墓のところからな」
「その中からだね」
「うわん、って大きな声がして」
「それでこっちもうわん、って言い返さないとなんだ」
「墓場に引き摺り込まれるんだよ、そんな噂が出ているんだよ」
「それで引き摺り込まれたらどうなるのかな、お寺のお墓の中に」
「いや、それは僕もな」
 どうなるのか聞かれるとだ、庄汰もだった。
 首を傾げさせてだ、こう言った。
「知らないんだよ」
「そうなんだ」
「けれど墓場に引き摺り込まれるってことは」
「いいことじゃないね」
「墓の棺桶の中に引き摺り込まれるか」
「いや、それはないと思うよ」
 喜椎人はそれはないと答えた。
「だってもう棺桶とか滅多にないよ」
「土葬がないからね」
「田舎じゃまだあるらしいけれど」
「この辺りだとないか」
「この辺り昔から火葬だし」
 それでというのだ。
「もう土葬はね」
「ないし、か」
「棺桶もないから」
「棺桶に引き摺り込まれることはないか」
「うん、ないよ」
 それこそというのだ。
「それはね」
「それならいいけれど」
「けれどね」
 喜椎人はここでだ、庄汰にこうも言った。
「墓場に引き摺り込まれるとかね」
「怖いな」
「それ自体が怖いよ、というかね」
「お寺の住職さんは何をしているのか」
「まあそれを言ったら」
「この噂もおかしなことになるか」
「そのうわんって言ってるのが住職さんか」
 喜椎人はこんなことも言った。
「それでお寺に人を引き摺り込んで何かをしている」
「それは大変だ、何とかしよう」
 ここでだ、庄汰は真剣な顔になって友人に言った。
「若し住職さんが女の子を引き摺り込んでいやらしいことをしていたら」
「その時は」
「そう、容赦しないで」
 まさにというのだ。
「住職さんを叩きのめして警察に突き出そうか」
「そうだね、そんな変態な住職さんだったらね」
 喜椎人も庄汰のその言葉に頷いて言った。
「放ってはおけないから」
「よし、今日にでもお寺のところ行こう」
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