最終話 ピクニックその五
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伯爵も来た、だが伯爵の格好は。
「あれっ、服装一緒だな」
「普段とだね」
「貴族の服かよ」
十八世紀のフランスのそれだった。
「その格好で行くのかよ」
「それが私のスタイルでね」
伯爵は薊の怪訝な声での問いに気さくな調子で答えた。
「むしろこのスタイルでの登山がね」
「?何かあるのかよ」
「かつての貴族だったのだよ」
「ピクニックも優雅なのかよ」
「如何にも」
そうだというのだ。
「これでも伯爵だからね」
「だからその服か」
「そう、この服で楽しませてもらうよ」
その登山をというのだ。
「そうさせてもらうよ」
「まあ伯爵がそう言うのならいいけれどな」
薊は伯爵の言葉を聞いてそれならとしてだった、あらためてこう言った。
「服破かない様にな」
「わかっているよ」
「それでお弁当だけれどね」
ここでだ、今度は智和が言って来た。
「僕の方でも用意してきたよ」
「お握りだよな、やっぱり」
「そう、お握りだよ」
「ピクニックはお握りが一番だな」
薊は智和とのやり取りからもだ、お握りのよさを再確認してそのうえでしみじみとした調子でこう言ったのだった。
「サンドイッチとかもいいけれど」
「お握りが一番っていうんだね」
「ああ、そうだよ」
まさにというのだ。
「お握り最高だよ」
「本当にお握りが好きなんだね」
「大好きだよ、こっちもたっぷり作ってきたからな」
「薊君達が作ったものだね」
「そうさ、おかずは豚カツだよ」
それだというのだ。
「それとほうれん草のおひたしとか昆布も持って来たよ」
「昆布はお握りの中に入れなかったんだね」
「今回はな」
「そうなんだね、僕の方は唐揚げだよ」
「鶏のか」
「うん、それと野菜の煮付けを持って来たから」
弁当の中に入れてきたというのだ。
「楽しみにしていてね」
「ああ、そうさせてもらうよ」
「それじゃあ行こう」
裕香も言ってだ、そのうえで。
一行はまずは電車に乗ってだった、それから。
その山の最寄りの駅に着いてからすぐに山を登った。その山を登りはじめてだ。薊はその周りを見回して言った。
「奇麗だな」
「そうね」
菖蒲が微笑んでだ、薊の言葉に頷いた。
「お空が澄んでいてね」
「秋の空だな」
スカイブルーではなかった、サファイアブルーの空だった。何処までも高く澄んでいてしかも雲が白い。その空を見てだ。
薊もだ、微笑んでこう言った。
「飛行機で飛んでいきたいな」
「ええ、青だし」
菖蒲は自分の好きな色ということもあり言った。
「いいと思うわ」
「山も奇麗だな」
登っている山だけでなくだ、薊は周りの山も見ていた。六甲の山々は何処までも連なりそのうえで豊かな緑を見せている。
その
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