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真田十勇士
巻ノ二 穴山小助その十二

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「それならな」
「ここで賊をするよりいいかと」
「真田家はいい家と聞く」
 小さい家だが武名を馳せている、しかも家臣を新しく入った者であっても篤く遇する。このことは天下でも評判になっていることだ。
 だからだ、ここで男達もこう話したのだ。幸村の申し出を受けて。
「それならな」
「幸村様から誘って頂いていますし」
「うむ、是非もないな」
「では」
「そうさせてもらおう、それでは」
 男は決めた、そのうえで。
 幸村に対してだ、こう申し出た。
「ではお願いします」
「わかり申した」
「すぐに上田に向かいますので」
 男はこう幸村に答えた。
「上田で再び会いましょうぞ」
「さすれば、ただ」
「ただ、とは」
「見たところ貴殿は相当に腕も立ち忍術の心得もありますな」
「おわかりになられますか」
「身体から出されている気や動きを見れば」
「そこからおわかりになられるとは」
 男は幸村の眼力に感嘆した、そしてその感嘆の声で言った。
「それがしが思っていた以上の方ですな」
「実は父上からそれがし直率の家臣となる天下の豪傑を何人か集めよと言われております」
「その最初の一人がわしじゃ」
 穴山は男に誇らしげに笑って言った。
「この穴山小助じゃ」
「天下一の鉄砲の使い手というのは御主か」
「そうじゃ、それで御主は何というのじゃ」
「うむ、由利鎌之助という」
 男はここで名乗った。
「天下一の鎖鎌、そして風の術の使い手である」
「そうか、ではその天下の鎖鎌使いとしてどうする」
「是非もない」
 由利は微笑み答えた。
「それがしでよければな」
「ではこれより」
「お願い申す」
 由利は幸村の前に膝をついた、他の賊の者達も。こうしてだった。
 由利鎌之助も幸村の家臣となった、賊の者達は上田に向かい幸村は穴山、由利と共にさらに人を探す旅を続けることにした。その幸村にだ。
 雲井は微笑んでだ、彼に言った。
「またしても家臣の方を手に入れられるとは」
「それがしは果報者でごわすな」
「そう思います、どうやら幸村殿は」
 雲井は幸村のその澄んだ目を見つつ言った、由利が言う通り実に澄んでおりしかもその光の輝きは強い。
「人を惹き寄せる方ですな」
「人をですか」
「不思議なまでに」
「左様ですな、それがしもです」
 由利も言うのだった。
「幸村様を見てすぐに惹かれました」
「左様ですな」
「死ぬまでいたいとさえ」
「思われていますか」
「お会いして間もないですが」
 それでもだというのだ。
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