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刀術
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第一章

                          刀術
 公家の眉に髷、顔は白く塗っておりしかもお歯黒までしている。服もだ。完全に公家のものだ。
 その彼がだ。一人の初老の僧侶に尋ねていた。
「和上、それでどうじゃ」
「竹千代のことですか」
「そうじゃ。織田から取り戻したな」
 この辺りは複雑だ。今川は織田から織田の主織田信秀の子信広の城を攻略し彼を虜にしたうえでだ。人質の交換としたのである。
 織田の人質にだ。その竹千代がいてだ。信広と交換してだ。
 彼を手に入れたというのだ。そしてだ。
 その公家風の男今川義元はだ。太源雪斎に尋ねた。
「あの者はどうじゃ」
「はい、筋はかなりのものです」
「左様か。よいか」
「学問も教えればその都度頭に入れますし」
 そしてだというのだ。
「馬も水練も見事です」
「ふむ。それはよいことじゃ」
「後は剣を教えます」
「うむ、剣を使えずしては何にもならん」
 武士としてだ。剣は馬と共に必ず身に着けなければならない。
 だからだ。義元も雪斎に言うのだった。
「それもよく教えよ」
「わかっております。ただ」
「剣は得意ではないか」
「学問や他のことに比べると」
 どうもだと。ここでだ。
 雪斎の言葉が濁った。それで言うのだった。
「不得手の様です」
「ううむ、それは参ったのう」
 義元もだ。それを聞いてだ。
 それでだ。こう言うのだった。
「結局いざという時己の身を守るのは己じゃ」
「その通りでございます」
「そうじゃ。馬で逃げることはできるが」
 それでもだというのだ。
「守るのは剣じゃ」
「その通りです。では竹千代に教えていきます」
「念入りにな。竹千代の筋がいいのなら」
 どうかとだ。義元は言う。
「今川の大きな力になるからのう」
「やがては今川の重臣にもなります」
「そうじゃ。あれは氏真も気に入っておる」
 今川の次の主である彼もだというのだ。
「だからこそじゃ」
「氏真様もですか」
「氏真はあれで麿とは違い気さくな者じゃ」
 それが氏真の性質だというのだ。
「相手が誰であろうと垣根は低い」
「竹千代にもですな」
「そうじゃ。和歌や蹴鞠も教えておる」
 こちらは公家の遊びだ。今川家には都落ちした公家の客人も多いのだ。義元の今の格好にしてもその公家達の影響であるのは言うまでもない。
「そうしておるからじゃ」
「ならば余計にですな」
 雪斎もすぐに応える。
「剣はしっかりと教えなければ」
「そうせよ」
 こうしてだ。雪斎は竹千代にだ。剣も教えることにした。その竹千代はというと。
 この時はやはり丸い公家眉にした公達、若い公家を思わせる外見の子供と話をしていた。歳は竹千代より少しだけ上の感じだ。

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