暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン ≪黒死病の叙事詩≫
≪アインクラッド篇≫
第三十三層 ゼンマイを孕んだ魔女
アスナの憂鬱 その弐
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ずプレイヤーAがプレイヤーBにデュエルを申請すると、Bに果たし状が届く。Bはそれを受けるか否かの段階で、デュエルの設定(オプション)――決闘方法――を決めることが出来るのだ。
 HP全損を前提としたデュエル≪完全決着≫、HPの半分まで削りあう≪半減決着≫、一度でも強攻撃――基本的にソードスキル――を先に当てたほうの勝ちとなる≪初撃決着≫の三つのモードがあるのだが、アスナにとって唯一勝率のある方法は≪初撃決着モード≫に限られている。インディゴの≪タンキーDPS≫はデュエルにおいて最も弱点のないスタイルであり、また手数で攻める細剣にとって非常に相性の悪いスタイルでもある。
 正攻法で戦えば、インディゴのHPを二割も削れる前に決着が着いてしまう。ともすれば、作戦を立てなくてはならないだろう。
 アスナが初撃決着モードも選択すると、六十秒のカウントダウンが開始された。

 六十秒。アスナは思考する。

 相手は体力の多いタンク、しかもダメージをそれなりに出せるタイプ。もし撃ち合いになれば、間違いなく私が負ける。そうならないように振る舞わなくてはならない。アスナの思考速度はゆっくりと加速し、同様に体感時間はゆっくりと減速していく。
 五十秒。アスナは勝機を探す。
 五割も削ることは難しいのだから、初撃決着以外の選択肢はあり得ない。つまりはソードスキルを直撃させる必要がある。でもこの考えはインディゴだって知っているはず。既に何かしらの対策を組み立てている……いえ、既に対策なんて多く持っている筈。きっとインディゴは相性差に甘えるような人じゃない。つまり不意打ちに近いものが望ましい、かな。
 四十秒。三十秒。二十秒……。アスナは多くの試行錯誤を繰り返していたが、それに反してインディゴは特に作戦を組み立ててはいなかった。理由は余裕でも油断でもなく≪アスナの速度に対応するために出来るだけ情報量(ざつねん)を減らす≫という精神論に()るものだった。インディゴはそういった根拠のない精神論をやたら好む。それがインディゴの類まれな強靭さの秘訣で、同時にくだらない弱点そのものでもあった。

 対になるような二人の思考の中、十秒を切り二人の距離が間合いに変化する。集中するアスナの視界にインディゴの姿がくっきりと浮かび上がり、反対に周囲の環境はぼやけてくる。盾を前面に出し、剣をその後ろに隠す型だ。なんにせよ既に初手は決まっている。
 …三、二、―――― 一、 (ゼロ)。床を蹴って跳び、先手を取ったのはアスナ。二人の間合いを一瞬で駆け抜けインディゴの懐に潜り込む。そこは既に片手剣(インディゴ)の間合いではなく、細剣(アスナ)の間合いだった。インディゴの視線は追い付いていない。インディゴの想像よりもずっと速かったのだ。
 インディゴの視界に入る前にアスナはスピー
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