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正々堂々と
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第三章

 そうしてだった。黄忠は一旦戦場から退いてだ。別の馬に乗って戻ってきた。
 そのうえでまた関羽と戦う。だが夜になりだった。
「今日はこれで終わりにしよう」
「そうだな。それではだ」
「またな」
「明日こそ」
 こう言い合ってだった。別れるのだった。二人は夜の闇の中で別れの挨拶を告げ合いそうしてこの日は戦いを終えたのだった。
 関羽が陣に戻るとだった。すぐに関平と周倉に迎えられ声をかけられたのだった。
「噂以上の方ですな」
「あそこまでとは」
「そうだな」
 それはだ。戦った関羽がもっともよくわかることだった。
 それでだ。彼はこう二人に話すのだった。
「わしとしても戦いがいがある」
「しかしです。父上」
「何故ですか」
 二人はだ。ここで怪訝な顔になって彼に言ってきた。
「あの落馬した時にです」
「何もされなかったのは」
「どうしてですか」
「まさに好機だったというのに」
「それは武人のすることではない」
 これが関羽の返答だった。
「落馬したそこを斬るのはだ」
「だからですか」
「そうされずにですか」
「ああされたと」
「そう仰るのですね」
「誤っているのならそう言うといい」
 それについては何も言わないという関羽だった。
「そうな」
「いえ、そうは言いません」
「思いません」
 関平も周倉もそれは強く言った。
「どうしてそう言いましょうか」
「将軍が正しいです」
「ならいいのだがな」
「では明日ですね」
「また明日」
「うむ、戦う」
 実際にそうするというのだった。彼は武人としてそうしたというのだった。
 そしてだった。黄忠もだ。こう周りの者達に言われていた。
「危ないところでしたな」
「もう少しで、です」
「やられていましたが」
「関羽、何故あそこで動かなかったのでしょうか」
「斬ろうと思えば斬れた」
 黄忠こう彼等に答えた。
「すぐにな」
「そうです。ですから危ないところでした」
「全く以て」
「だが、だ」
 ここでだ。黄忠は自ら言うのだった。
「悪い気はしない」
「お命が助かったからこそ」
「だからですか」
「それで」
「いや、それは違う」
 そうではないというのだった。彼はだ。
「そうではない。そこに武人を見た」
「関羽雲長は生粋の武人と聞いていますが」
「それをですか」
「御覧になられたと」
「そうだ。わしも武に生きてきた」 
 黄忠もだというのだ。彼自身もまた。
「これまでな。関羽はそれを見せた」
「ですが敵です」
「倒さなければなりません」
「それは何があっても」
「わかっておる」
 それはだというのだ。しかしだった。

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