暁 〜小説投稿サイト〜
超越回帰のフォルトゥーナ
ep-1─それは突然に舞い降りて
#03
[1/4]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
 レンの眠りは、比較的浅い。

 子供の頃から、熟睡すると言うことは思いの外少なかったように思う。軍役時代はもっと浅かったし、服役初期の頃は殆ど寝付けない事もあった。

 夢を見るのだ。狂乱と炎と死体の中で、血染めの剣を振るう夢を。それが恐ろしくて、常に警戒してしまう。

 夢を見るのは眠りが浅い証拠なのだが、それを知っていても、眠りにつくのは恐ろしくなってしまう。

 切り裂いたのは、ユメだった。切り裂いたのは、《隊長》だった。切り裂いたのは──マリアだった。

 誰も彼もを、この剣で切り刻み──

「はぁっ!?」

 勢い良く跳ね起きる。久し振りだ。あの夢を見たのは。ここ最近は、ずっと見なかったのに。

 汗でびっしょりと湿った右の手に、未だ人斬りの感触が残っている。忌まわしい、殺害の記憶。

 二年前。レンは、自らが所属していた《担い手》の部隊を、己の手で全滅させた。仲間の一人一人をその手にかけ、ずっと慕っていた隊長すらも殺害した。

 レンの《運命(カルマ)》が見せる記憶も、似たような《仲間殺し》の場面だ。つくづく、運命とは忌まわしいモノだ、と思わずにはいられない。

 しかも今日に至っては、夢の中にまであの女(マリア)が出てきた。これ程苛立たしい事があるだろうか。

 大体、あの女は何者なのか。《円卓のマリア(マリア・ザ・ラウンドテーブル)》と名乗りはしたが、本名だとは到底思えない。何より、なぜレンの事を知っているのか、そもそも分かる筈の無い他人の《運命(カルマ)》がどうして分かるのか。

 そんな事に、頭を悩ませていたせいだろうか。

 気付くのが、遅れた。

「──ッ!!」

 レンの感覚が、何者かが家に近づいてくるのを察知した。気配は一つ。不覚だ、既にかなり近くまで来ている。

 ──《索敵(サーチング)》。

 レンは脳裏で、自らの《超越回帰(プロバブリー)》の一端の解放を宣言した。

 瞬時に、視界に薄らとフィルターの様なものがかかった感覚。同時に、いくつかの情報が表示され、レンに周囲の状況を伝えてくる。

 レンの持つ《超越回帰》には、本命の能力の他に、様々な役立つ能力が含まれている。恐らく何らかの技術の集合体を憑依させる、《個体発現型》の能力なのではないか、と、レンの《超越回帰》を見た研究者は言ったが、どちらにせよ今はありがたく使わせてもらう。

 十を超えるサブ能力のうちの一つ、《索敵》スキル。かなり遠方まで周囲の物を感知できる、レーダー顔負けの能力である。サブ能力は同一の物を持つ人物もかなり多いので、同じく《索敵》を使える者は軍役時代もかなりいたが、効果範囲と精度の面においてレンは抜きんでていた。

 マリアの存在を家の外から察知
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ