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黄色い帽子
2部分:第二章
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第二章

「聞いたこともない話だな」
「あの国ではそんな非道が許されるのか」
「政治将校という党員に睨まれれば終わりか」
「そうした部隊か」
 しかもだ。正規軍もだ。
 黄色いベレー帽やヘルメットの彼等はだ。進軍の先々でだった。
「幼女を集団で暴行してか」
「その幼女はもう二度と立てないらしいな」
「奴等が通った先では暴行され自殺した婦人の死体で川が埋まっているらしいぞ」
「とにかく手当たり次第に襲うらしい」
「少しでも逆らえば虐殺だ」
 恐ろしい噂が次々と出て来ていた。
「何でも奪い壊し」
「殺していく」
「それが平和勢力の軍隊なのか」
「とんでもない奴等だぞ」
 この国も大国と戦っていた。それで情報が伝わっていたのだ。実際にだ。占領地ではそうしたことが日常的に行われていた。
 この国は敗れた。大国にも多くの領土を奪われた。そこから逃げ延びた人達の証言もだ。噂を実証するものばかりであった。
「婦女子は頭を丸めて逃げないといけなかったのか」
「民間人でも容赦なしだと」
「しかも捕虜は極寒の地で強制労働か」
「そんな国か」
「何という奴等だ」
 完全にだ。大国、そしてその主義の実態が知れ渡ってしまった。
「独裁者の国だ」
「粛清や弾圧が日常化している」
「党員が全てを支配しているんだ」
「そんな国だ」
「自由はない」
「人民が主役ではない」
「言っていることとは全然違う国だ」
 こう見なされた。だが、だ。
 知識人達はだ。大国に招待され貴族達も口にしたことのない美酒と美食を御馳走されオペラや芸術、それに人民と称する役者達の芝居を見させられてだ。口々に言うのだった。
「いや、素晴らしい国だ」
「軍の規律もいい」
「平和を愛しているんだ」
「そういう国なんだ」
 こう言うのだった。
「戦争中の話は全て嘘だ」
「そうだ、捏造だ」
「あの国はそんなことをしない」
「絶対にだ」
 根拠なくだ。しかも事実を知ったうえでの言葉だった。
「帝国主義者達の悪質なプロパガンダに惑わされるな」
「事実は一つだ」
 これは確かにその通りの言葉ではあった。
「あの国のあのイデオロギーが世界を平和にする」
「その時が今近付いてきているんだ」
 こうだ。彼等は吹聴し続ける。あくまでだ。
 事実、それも恐ろしいものが次々に出て来る。独裁者が死にだ。
 おぞましい粛清や弾圧の事実がその大国自身から出てもだった。
「あの独裁者個人の問題だ」
「それに過ぎない」
 その独裁者をついこの前まで偉大な革命家だの子供好きの親父さんだの言っていたその口でだ。平然と言ってしまう彼等だった。
「それがわかっていないのか」
「あの大国の政治的土壌でああなったんだ」
「あくまでイデオロギーの問題
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