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夜会
4部分:第四章
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第四章

「紛れもなくです。あの男の被害者なのです」
「そうだというのですか」
「我々がどれだけ血を流すことを強いられたか」
 フランス側はあくまでこう主張する。
「それを考えればです」
「被害者ですか」
「はい、そうです」
「では全ては」
「あの男が悪いのです」
 これがフランスがナポレオンに任せる最後の仕事だった。彼に全責任を押し付けてだ。そのうえで人身御供にしようというのだ。
 彼等はそれをフランスの為にあえてすることに決めたのだった。
 そしてだ。さらにだった。フランス側はこう言うのだった。
「我等は一つ素晴しいことをしています」
「素晴しいこととは」
「それは一体」
「そのナポレオンを追い出したのです」
 そうしたというのだ。
「あの男をエルバ島に追い出したではありませんか」
「ではナポレオンを倒したのは」
「我々です」
 フランス側は胸を張って主張する。
「素晴しいことではないでしょうか」
「そう考えられるのですか?」
 ここで言ったのはイギリス側だ。これまで黙っていた彼等はここでようやく口を開いた。そうしてそのうえでフランス側に言うのだった。
「貴国は」
「そうですが」
「我々はトラファルガーで勝ちスペインを助けてきましたが」
 彼等は彼等で自分の功績を話すのだった。
「それは」
「いや、しかしです」
「しかしとは?」
「そのせいでスペインは泥沼になりましたね」
 こうイギリス側に言うのである。
「そうでしたね」
「我が国がスペインの民衆を助けたことがですか」
「それがナポレオンを過激に走らせました」
 ゲリラに対して虐殺で挑んだのだ。それにより多くの血が流れた。スペイン内戦は実に多くの血が流れた酸鼻な戦いだったのだ。
 そのことをだ。フランス側はイギリス側に言うのだった。
「ああしなければです」
「いや、ああしなければスペインはです」
 イギリス側も己の意見を主張する。
「貴国に敗れていたでしょう」
「我が国といいますか」
「はい」
 はっきりとだ。皮肉を言ってみせたのである。ナポレオンではないとだ。
「ですからああしたのです」
「ナポレオンですか」
 フランス側も負けてはいない。平然として返す。
「あの男にですね」
「ううむ、そう仰いますか」
「ナポレオンだと」
「陛下が戻られました」
 フランス側は王政復古をその主張の根拠にしてきた。
「ですから」
「だからナポレオンですか」
「あの男がしたことですか」
「我々も酷い目に遭いました」
 自分達は被害者だというのだ。ナポレオンの。
「ですからその彼のせいです」
「ではそのナポレオンをですか」
「エルバ島に流しましたからこそ」
「いや、あの男もこれで終わりです」
 
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