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遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン26 鉄砲水と真紅の瞳
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「やあ、少しいいかな?」

 そう言っていつも突然なフブキングこと吹雪さんが僕の店に入ってきたのは、万丈目が元に戻ったその日の昼休みだった。正直なところ徹夜なんてやり慣れないことをしたせいで眠くてしょうがなかったが、まさか追い返すわけにもいかないので店内に迎え入れる。お客ならもう少し頭もはっきりしたのだろうが、彼がケーキを買いに来たわけではないことだけは、雰囲気ですぐに分かった。

「はい、どーしたんです?」
「少し君と話がしたくてね。まず、万丈目君が元に戻ったらしいね。おめでとう」
「いえいえ」

 少し表情を柔らかくして、まずは今朝会ったデュエルについて話を振ってくる吹雪さん。にしても、あの時観客はいなかったはずなのにどんだけ耳早いんだこの人。

「それで、本題なんだけどね。……君は、最近の亮について知っているかい?」
「亮って、カイザーのことですか?いや、どうも世間には疎くて」

 一度エドに負けてからだんだん負けがかさんできて、プロとしてのランクをどんどん落とされたところまでは僕も見ている。だけど、この様子だとまだ先の話がありそうだ。

「ふむ、君ならそう言うと思ったよ。僕の口から説明するより、この記事を読む方が早いだろう」

 そう言いつつ吹雪さんがサッと差し出したのは、よく翔も読んでいるデュエル雑誌だ。何度も読み返したらしく開いて固定した跡があるそのページは、見開き1ページ使ってある特集を組んでいた。

「地獄の貴公子、ヘルカイザーに迫る……?」

 どうなってるんだ、これ。悪そうな顔で腕組みするカイザーの服は、プロ入りしてからもずっと着ていた白いものから万丈目並みの全身真っ黒にチェンジしていた。イメチェンでも図ったのかとそのまま記事を読み進めていくと、そこには目を疑うような内容がつらつらと書き連ねてあった。
 いわく、ヘルカイザーとは一時期表舞台から姿を消したカイザーが新たな戦術を手に入れ文字通り地獄の底から蘇ってからの名前であると。以前のポリシーであったリスペクトデュエルをかなぐり捨て、どこまでも貪欲に勝利のみをリスペクトするその姿勢には熱狂的なファンも多く、その人気はすでに昔を上回るほどになっていると。

「えっと……」

 なんだこれ、といいたいのをぐっとこらえる。あのカイザーがヒールに移行なんて、もう何がなんだかさっぱり分からない。しかもこの写真見る限り、それがなかなかサマになっている。

「僕も初めて見た時は目を疑ったけど、これが現実みたいなんだ。彼は今、僕らの知る亮とは別の人間になっている」
「で、でもこれだってスポンサーとかに言われてのキャラ付けかもしれないし」
「その可能性も考えてみたさ。だけど昨夜の亮の試合を見て、確信したんだ。あれは亮が目指していたリスペクトデュエル
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