暁 〜小説投稿サイト〜
サロン
第五章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後
「インスピレーションを得たよ」
「芸術家としての」
「そうなったよ、だからね」
「それで、ですね」
「これはいい絵が描けそうだよ」
 こう言うのだった。
「本当にね」
「それは何よりですね」
「とはいっても今は絵の具も筆も持って来ていないから」
 バカンスに専念することにしたからだ、仕事道具はあえて持参しなかったのだ。
「描かないけれどね」
「ここではですね」
「うん、けれどね」
「ロンドンに帰られたら」
「描くよ、サロンの人もね」
「風景画が専門ですよね」
「それでもね」
 インスピレーションを得たからというのだ。
「描くよ」
「では頑張って下さいね」
「ロンドンに帰ったらね、しかしね」 
 その店員のサロンを見つつだ、ポッターはしみじみとして言った。
「いや、サロンはいいね」
「奇麗だっていうんですね」
「相当にね、だからインスピレーションを得たんだよ」
「そういうことですね」
「それではね」
「ロンドンに帰られたら」
「描くよ」
 是非にと言ってだ、そしてだった。
 ポッターはこのバカンスの間海と美酒、花達だけでなくだ。サロンも観て楽しんだ。そしてロンドンに帰るとだ。
 実際に風景画だけでなくサロンを着た女性達も描いた、そうしてだった。
 その絵を観てだ、コーウェルは描いている本人に言った。
「新境地を開いたね」
「うん、 美人画にもね」
「進出出来たね」
「そうなったよ、いや本当にね」
「マレーシアでいいものを手に入れたね」
「サロンも観てね、サロンはいいよ」
 この服の素晴らしさをだ、ポッターはコーウェルに話す。彼は絵の具に汚れたままティータイムに入っていてお茶を飲みつつ話しているのだ。
「僕もそのよさからね」
「インスピレーションを得てだね」
「描けているよ」
「それは何より。ただね」
「ただ?」
「君はあちらでは相手を見付けられたかな」
 コーウェルは笑ってポッターにだ、このことも問うた。
「そちらは」
「恋の相手をかい?」
「うん、そちらはどうだったのかな」
「今言われるまで忘れていたよ」
 これがポッターの返答だった。
「そういえば」
「それはよくないね」
「うん、あちらに行ってもカップルか家族だけだったしね」
「略奪愛というタイプではないしね、君は」
「奪う者は奪われるよ」
 この言葉はポッターの持論でもある。
「自分に返って来るよ」
「そういうものだね、世の中は実際に」
「だからね」
「君は結局ガイドさんと二人だけだったんだね」
「そうだったよ、まあそちらはね」
 恋の相手、ひいては生涯の伴侶はというのだ。
「結婚相談所に登録しようかな」
「それがいいだろうね、君の場合はね」
 コーウェルも笑って応えた、こ
[8]前話 [1] 最後


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ