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乱世の確率事象改変
彼の為の優しい鎖
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ものの被害は甚大。不意打ちの類、如何な彼といえど気を抜ききっているこの状況では対応など出来るはずもない。
 耐えようと蹲れば覆いかぶさるように見えるのは当然。小さな少女を抱き込むカタチになる。その姿は噂の通りにしか見えないわけで……まあ、こうして皆が白い目を向けるのも様式美になりつつある。約一名、神速だけはもはや耐え切れずに笑い転げていたが。
 しかし、四人の時間だからと我慢させられていた朔夜はおかまいなしに、寝台を共にして一日中一緒にいた彼女達を見もせずに、彼に抱きすくめられたことが嬉しくて恥ずかしくて、顔を真っ赤にしてぎゅうと抱きついた。

「そ、そんな、大胆な……し、しかしいつでも、準備は出来てますっ」

 ばっち来い! と言わんばかりに大きな声を出した。
 痛みに顔を引き攣らせながら、アクティブ過ぎる彼女の言葉は聞こえているが聞こえない振り。

「た、頼む。優しくしてくれな、朔夜」
「は、はひっ! わ、わたちにも、や、やしゃしく、してくだしあ!」

 噛み合っていない会話。暴走した朔夜は止めるに叶わず。彼は頭突きに対して言ったとしても、朔夜は閨でのあれこれにとってしまった。
 抱きついたまま顔を見上げて、噛み噛みの言葉を紡いで、また顔を真っ赤に茹で上げて俯いた彼女の破壊力はいつになく増している。

――何なのだ、これは……どうすればいいのだ……。

 思わず心の内で全ルートがバッドエンドな鬱ゲーの台詞を反芻しつつ、彼は頭を抱えたくなった。
 この状況は余りに酷い。もっとゆっくりと落ち着いて、緩やかな始まりを期待していたというのに、これではあのバカ共との酒宴で弄られている時と変わらない。もしくはもっと酷い。
 ぐるりと見渡せば白い目が幾多。彼に逃げ場は無い。何よりも……後ろを振り返るのが怖かった。

「朔夜ちゃん?」
「……っ!」

 優しいはずの声が紡がれ、空気が一段冷え込んでいく。
 身体を跳ねさせた朔夜は、隠れようと彼の胸に顔を埋めた。震える身体は小動物のよう。狼というより子犬にしか思えない。
 声を出したのは、雛里ではない。その後ろ。怒ることの無いはずの彼女が、怒っているのだ。

「皆でお食事を楽しむ時間なのに……」
「ひっ」
「暴れたり場を乱したりしちゃダメじゃないかな?」
「あわわ……」

 絶対零度の空気を醸し出す月の前、雛里も何故か震えあがっていた。詠でさえ、顔を引き攣らせて動けないでいる。

「離れようね?」
「ひゃいっ」

 言われて直ぐに朔夜が離れた。
 普段からは想像できないような機敏な動きに皆は呆気に取られる。ただし、彼の隣に座り直すところがまた、朔夜の強かさではあるが。

――こえぇ……。っと、このままグダグダと過ごすのも悪い。

 内心で
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