暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜紫紺の剣士〜
アインクラッド編
4.夜桜唱団
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ややむすっとした表情をしつつ、オブジェクト化したアイテム―――フーデッドローブをぱんっと音を立てて広げた。背中のちょうど真ん中に、金色の糸で1輪の桜と、それを取り囲むように舞う花びらが刺繍してあった。
「これが夜桜唱団のマークね。そして、私達の目的はズバリ!この世界を、楽しむことです!」
「・・・は?」
思わず、声が出てしまった。
「本気で・・・本気で言ってるのか?」
「え?そうだよ?攻略組の皆もそうでしょ?」
首をかしげるミーシャを見て、俺は絶句した。
今攻略組にいるプレイヤーは、どちらかと言えば置いていかれたくない、誰よりも上に立っていたいという思いで攻略に参加している奴等が大半のはずだ。かくいう俺も、決してこのゲームを楽しんでいるわけではない。そもそも楽しめない。このゲームはデスゲームなのだから。
なのに、こいつは、あっさりとそういった。シルストやナツも、全く否定しない。まじまじとミーシャの目を見つめるが、そこに他意、ましてや悪意は見られない。
つまり、本気なのだ。
ミーシャの話は続く。
「確かに、変なこと言ってるっていうのは自覚してるよ。でも、今私たちが生きてるのは、この世界なんだよ。たとえ全ての物がポリゴンだったとしても」
ミーシャの指が、彼女の左斜め上を指す。そこにあるのは、きっとHPバーだ。
「私たちの命が、可視化されたHPだとしても。なら・・・」
「何故だ」
「え?」
「何故、誘った」
俺の、限りなく文字を省略した問い掛けに、ミーシャは一瞬声を詰まらせた。しばらく悩んだようだったが、どこか決心したように答える。
「君が、この世界を生きているように見えなかったから」
ちょっと、ミーシャ!と咎めるようなシルストの声が聞こえた。だがそれをきれいさっぱり無視し、ミーシャはただ俺を真っ直ぐ見つめてくる。
「ね、私達のギルドに入らない?」
「・・・断る。俺にメリットがない」
「ナツが作るご飯とギルドホームが付いてくるよ?」
「ちょ、何言ってるんッスか先輩!」
「何が付いてきても、入らない」
―――それに、俺とあんたたちは、住む世界が違う。
そう、言いかけていた。
そんな俺の思考を遮るように、ミーシャが俺の目を覗き込むように見た。
「独りは、危ないよ」
「・・・・・・」
俺はミーシャから目を逸らした。それでも、ナツやタクミが俺を見ている。

もしかしたら。

もしかしたら、俺が信じられなくなってしまったものを、この人たちは、持っているのだろうか―――。

「分かった」
「えっ!?じゃあ・・・!」
「まだ入るとは言っていない。今度あんた達とフィールドに同行して、技量を見る。決めるのはそれからだ」
「う〜ん・・・まあそれでも良いや!ありがとう!」
ニカッ、と効果音がつきそうなぐらい
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ