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少年少女の戦極時代・アフター
After23 嘆きを振り切り
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たしは墜ちたりなんかしない)

 羽根をもがれ、鎧を砕かれても、室井咲はまだそう信じることができた。





 ボロボロの羽根を無理やり羽ばたかせ、月花はついに光の源へ辿り着いた。

 ぼんやりとだが明るいその場所で、ヘルヘイムの植物の蔓を繭のように全身に巻きつけて眠る、紘汰のもとへ。

『紘汰くん――』

 月花は、“はじまりの男”の姿をした紘汰に浮かび寄る。
 紘汰の心臓の上には、地球でロード・デュークがバロンに使った、対インベスの矢が刺さっていた。

 白いライドウェアが裂けた掌で、直接、紘汰の両頬に触れた。――温かい。

 咲は変身を解いた。
 ずっと憧れだった紘汰に最も近い蔓に、そっと手と頭を寄せてから。
 唇を、紘汰のそれに寄せる。あと3センチで互いの唇が触れ合う。
 だが、これ以上は近づかず、咲は紘汰の胸に刺さる矢を掴んだ。


「おはよう。紘汰くん」


 矢を引き抜き、紘汰に向けるキモチを全て詰め込んだ言葉を、告げた。

 紘汰を守るように抱え込んでいた蔓が、弾け飛んだ。

 顔を上げる。
 咲が見守る前で、葛葉紘汰はゆっくりと両の瞼を開いた。

 咲に焦点を合わせた紘汰は、微笑み、胸板に置かれた咲の両手を上から包んだ。

「……ずっと視てたよ。舞とヘキサちゃんを通して。咲ちゃんがどんだけ頑張って俺たちのとこへ来てくれたか」

 胸に身を寄せていた咲を、紘汰は柔らかく抱き寄せた。

「ありがとう」

 咲もまた紘汰の背中に両腕を回した。

「逢いたかった」
「うん」
「逢いたかったの。ずっと。逢えないと、ずっと、紘汰くんとの思い出が全部さびしいままで終わっちゃうと思ったの」
「うん」
「でも、がんばった。がんばって、笑って、いろんな人と一緒に過ごしてきて。がんばったんだよ」
「うん。えらかったな」

 互いに少し体を離し、抱き合ったまま向き合った。
 紘汰のやわらかいオッドアイに映る咲は、泣き笑いだった。
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