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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
閑話 第一話
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してはならないと思って自重していた。交友にはある程度気遣う彼女だが、他人に関しては一切遠慮しない彼女にしては非常に珍しい姿とも言えた。

「神の目っちゅうのも節穴やな。もう少し厳しくせな」
「これ以上厳しくしたら、貴女の審査を乗り越えられる人いなくなるわよ?」
「そういう意味やない、もっと視界を広くとって、その人の覚悟っちゅうもんに焦点を合わせなあかんという意味や」
「……貴女の変わりようも、クレアの凄いところなのかもしれないわね」

 二人としては駄弁っていないで涙が枯れても泣き続けるセレーネの傍に行ってやりたいのだが、時には一人になりたいときもあるだろう、それを汲み取って彼女が見える場所で見守っていた。

「こりゃあ大きなもんを失ったなぁ」
「初めてセレーネが愛した人ですもの。それは悲しいでしょう」
「うちとしてはセレーネがヤンデレになりそうで怖いんやけど」
「……私としても勘弁願うわ」

 セレーネは天界でも指折りの実力者だ。彼女は弓の名手であると共に、魔法を司る女神でもあるのだ。本気になれば神の一人や二人を生かしたまま殺し続けることすら出来る。美女に目が無い男神たちが絶世の美女であるセレーネに手を出さないのは、そういった理由もあるのだ。
 とはいえ下界にいる間は神の力は禁じられているのだが、神の力を剥奪されたわけではない。一度血走ってしまえば掟を破ることすら考えられる。さすがに天界の良識と謳われるセレーネに限ってそんなことは無いと思いたい二人だが、彼女がクレアに寄せていた愛情は並々ならぬ質量があった。それが空っぽになった今、さしものセレーネといえど気をおかしくしてしまいそうである。

「さてね……セレーネの奴、今後どうするつもりなんやろ」
「ファミリアには無頓着ですものね。愛したい者を見つけるまで、蛻(もぬけ)の殻かしら」
「さらっと他人事のように言うなぁあんた……。互いに認める神友としてもうちっと気を利かせてやりぃな」
「利かせられたらとっくに利かせてるわよ。付き合いの長い私だってあんなセレーネを初めて見るんだから」

 式が終わってから時間が経つにつれ人の喧騒も引いていき人気も少なくなり、やがて最前列ですすり泣くセレーネとロキとヘファイストスのみとなった。日も沈み辺り一体が暗闇に包まれるまで付き合っていた二人だが、さすがに埒が明かないと各々のホームへと帰った。

 一人の女神の慟哭が暫時木霊した。

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