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妖女
3部分:第三章
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つかりはしなかったのだ。奇怪なことに。
 このことはすぐに清子が今いる学校でも噂になった。皆怪訝な顔で言い合う。
「何人も一度にか」
「何処に行ったのかさえわからないそうよ」
 そう噂するのだった。
「何処に消えたのかさえね。わからないそうよ」
「まあいいんじゃないのか?」
 だが元々評判の悪い連中なのでこう結論付けられるのだった。
「あんな連中。いない方がね」
「それもそうね」
「そうだね」
 彼等の出した結論はこうなるのだった。
「どっちにしろ街が奇麗になったよ」
「害虫がいなくなっただけなのね」
「害虫ね」
 それを聞いて清子は呟くのだった。
「そういえば。蜘蛛は害虫を食べるものだったわね」
「?姉小路さん」
 隣を一緒に歩いていたクラスメイトの一人が今の清子の言葉にふと顔を向けた。
「今何て」
「何でもないわ」
 だが彼女はこう言葉を返して打ち消すだけだった。
「別にね」
「そうなの。それじゃあいいわ」
「ええ」
 それからも彼女に言い寄る男女は多かったが告白してからのことを思い出す人間はいなかった。それがどうしてなのかさえわからない。しかも清子について悪感情を抱くこともない。これもまた不思議なことであった。
 その不思議な輪、いや網の中に彼女はいた。だが彼女はその中央から一歩も動かないのだった。まるでそこでいつも待っているかのようにだった。
 今日もまた清子に告白する者がいた。それは近くの学校の中学生だった。
「あの、姉小路清子さんですよね」
「そうだと言ったら?」
 登校中だった。通学路で声をかけられたのだ。
「どうするのかしら」
「そ、それは」
 清子に問われておどおどとしだす。見ればまだ初々しい顔をしていて女の子の様にきめ細かな肌をしている。まだ華奢で小さい身体を学生服で包んでいる。そんな少年だった。
「一つ御聞きしたいことがあります」
「聞きたいことがあってここに来たのかしら」
「それはその」
 それを問われてまたおどおどしだす。清子はからかっているつもりはなかったがそれでも彼女は少年を弄ぶようなやり取りをしていた。
「あれなんです」
「あれ?」
「まず御聞きしたいんです」
 勇気を振り絞るようにして清子に言ってきた。
「姉小路清子さん」
「ええ」
 フルネームを言ってきたのだった。
「今、お付き合いしている人はおられますか」
「お付き合いしている人?」
「はい」
 泣きそうな顔で清子に問う。
「おられますか。そういう人は」
「夫・・・・・・いえ」
 何故かここで夫と言うのが謎だった。

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