第八話「色彩の崩壊を告げる悪魔の王」
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上条当麻が目の前に現れた3メートル長の巨狼を相対するよりも前に、彼の首根っこを引っ張った人物がいた。
「ぐえっ!?」
遠山キンジに引っ張られ首を絞められた鶏のような変な声を出した直後、上条が先ほどまでいた場所に、振りかぶられた小型の斧──といっても氷の巨狼から見たら小型というもので、上条と同じくらいの大きさがあるが──のような物が突き刺さる。小規模なクレーターができていたことから見て、突き刺さるというよりかは叩きつけられたと言った方がいいだろう。氷でできているが、形状は北アメリカのインディアンが使う斧、トマホークに似ていた。
「なんだ、こいつ!?」
「キーくん気をつけて!超能力の可能性がある!」
白雪は刀を、他の者たちもそれぞれの武器を構えている。キンジも懐からベレッタを取り出した。
突然の強襲。しかしキンジには心当たりがあった。製薬会社が雇った学園都市の能力者。目の前に立つ巨狼が、その能力者によって作られた可能性が武偵校の一同の頭をよぎる。
獣人のような体型をとった氷の巨狼は、ゆっくりと振り向き、再度トマホークを構える。その標的は先ほどと同じ上条だ。
「──おい!来るぞ!」
振り下ろされたトマホークは近くにいるキンジや中空知を巻き込むような勢いで放たれた。
もう一度、近くにいた上条の首根っこを引っ張り避けようとしたキンジだったが、当の上条がキンジを庇うような形でトマホークの前に踊り出したのには、少なくともなってはいないキンジでは反応できなかった。
「なっ!?」
瞬時に巨大なトマホークに押し潰される少年という最悪の想像をしてしまう。あの威力だ。人などまるで粘土のように簡単に潰されてしまう。
が、そんな最悪の予測をする必要は、無かった。
「幻想殺し」。上条の右手に宿るそれは、相対したものが、天使によって放たれた致死量の攻撃だろうと緋弾の力によって放たれた装甲を紙屑のように貫くレーザーだろうと、異能の力であれば全て無効化する。
結果は単純なものだった。
降りかぶられた右拳。常人の右腕など簡単に砕くはずの氷のトマホークが、右拳と接触した瞬間、弾け飛ぶ。
「なっ……」
この場で上条の右手のことを知ってる人間はインデックスやオティヌス、浜面仕上だけである。それ以外の人間にはまるで、「上条の右拳が氷の斧を砕いた」ように見えたのだ。
ジャンヌは氷の超能力者だ。実力はイ・ウーの中では最弱だったが、裏社会に関わる者としてはそれなりの実力者であることは自負していた。そんな彼女から見ても、あの氷は相当の強度を誇るもの
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