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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第三十話 真剣の意味
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一大戦術機整備工場である瑞穂工場を巡る一向、そして戦術機の機体整備工場から戦術機から取り外された管制ユニットの整備地区へと移動していた。
そして幾つもの厳重なセキュリティーロックの分厚い鋼鉄の扉、その最後が開かれた。

「―――タイム−4秒!新記録です!」

歓声、オペレーターが告げたその言葉に周囲の研究員や職員が一斉に喜び湧きだった。

「大尉すごいですね、まさか操縦桿を変更しただけでこれとは……!」
「ああ、結果は上々だな。」

「素晴らしいですよ。まさか操縦桿に操縦桿をつけるとは正に発想の開拓だ!」
「いや、まだ足りない。もっと機械に任せるべき部分と人間が担うべき部分を選り分けて連携させるんだ―――何でもかんでも機械に任せればいいという訳ではない。その逆もまた然り。」

シミュレーターと管制室を見渡せる指令区画、其処では青を身に纏う隻腕の男性士官が白衣の壮齢の男性と言葉を交わしていた。

戦術機の自律制御を初めとして各種兵器が自動化・高効率化されてゆく中で時代に逆境……とは往かないまでも、機械に人間の能力を引き出させるという発想はある意味斬新だった。


「なかなか白熱しているな。」
「……真壁か。―――ん?」


青を纏う隻腕の青年が振り返る―――その大きな裂傷が走る顔に清十郎は見覚えがあった。

「え……柾さん?」
「久しいな清十郎、それに甲斐。」

青き隻腕の修羅武士は悠然と答えるのだった。



10年前―――1991年。
空を切る竹刀が空中で衝突する。それに合わさる踏み込みが道場の床を打ち鳴らす
防具を付けた二人の少年が激しく攻防を入れ替えながら竹刀の鎬を削り合っていた。


「ふむ、剣道しか経験のない割に助六郎相手によく戦っている。」
「父上、それはそんなに凄いことなのですか?」

「うむ。スポーツとして定着してしまった剣道はきれいすぎる。また、昇段審査の時ぐらいしか型稽古をせぬ。そんなもの演劇と変わらぬ、茶番だ。
それと竹刀では傷にならぬからな、体当たりで当たり所を外すだけで有効打突とは成りえぬし、軽いから刀身を往なすのも楽よ。」

「なるほど……」

二人の少年の試合を見つつ父、零滋郎の言葉に得心を持つ清十郎。
竹刀の扱いに慣れていない剣術家の場合、竹刀だと間合いが狂う。しかし、剣道家相手の場合であれば必要とされる力の入れ方が根本から異なるため、重い真剣を扱うことが前提の剣術家の剣を一切の考慮なしに受け止めればそれだけで竹刀を弾き飛ばされるか、体ごと吹き飛ばされる。

―――だというのに、それを真っ向から打ち合える。それだけで凡百ではないという事だ。


「ふっ、ギラついておる、良き目じゃ。……才能があるな。」
「才能……ですか?」

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