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キュクロプス
3部分:第三章
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第三章

「ですからゼウス様」
「我等の御願いは」
「何だ?」
「我等の彼等の見張りを命じて下さい」
「それが我等の願う褒美です」
 こうゼウスに対して言うのだった。
「そうして彼等の変わり果てた姿を眺めつつその見張りをしたいのです」
「タンタロスの門のところで」
「それがそなた等の願いか」
 ゼウスは彼等がどうしてそんなことを願うのかよくわかった。怨みは消えていないのだ。
「はい、その通りです」
「ですから御願いします」
 彼等はまたゼウスに願い出た。そしてゼウスは彼等のその願いを受けることにしたのだった。
「それではだ」
「宜しいのですね?」
「そなた等の願いは最もだ」
 彼等のその言葉がわかっているからこその言葉であった。
「それでは。そなた達の褒美はその仕事だ」
 あらためて彼等に告げた。
「タンタロスの門においてその見張りをしそなた達を苦しめたあの者達の変わり果てた姿を見ているのだ。よいな」
「有り難き幸せ」
「それでは」
 こうして彼等はその望み通りの褒美を与えられた。そしてそのことに歓びとゼウスを讃える言葉を五十の口からそれぞれ言いつつその仕事に衝いた。次はキュクロプス達の番だった。
「次はそなた達だが」
「はい」
「何でも言ってみよ」
 彼等に対して再び言ってきた。
「望みのものを。何でもな」
「と言われましても」
「我々は」
 しかし彼等はゼウスの問いに対して顔を見合わせるだけだった。
「別にこれといって何も」
「ありません」
「ないというのか」
「はあ」
 どうにもぼんやりとした返事でゼウスに応えるのだった。
「ありません」
「特には」
「それではかえってわしが困る」
 ゼウスは彼等のその言葉を聞いて逆に彼が困った顔になってしまった。
「そなた達はこの戦いの勝利をわしにもたらせてくれた」
「あの武器にですか」
「ヘカトンケイル達と共にな。このことは事実だ」
 あらためてこのことを彼等に話す。
「それで何もいらぬというのではわしの立場はどうなる?わしとしてもそなた達には何としても褒美を与えなければならないのだ。天を治める者としてな」
「そう言われましても」
「思い立つこともありませんし」
 やはり彼等はこう言うのだった。
「ですから別に」
「この世界にいられたらいいですし」
「そんなものは褒美のうちに入らん」
 日の当たる世界にいられればいいということは褒美にはならないというのだ。
「あれはむしろクロノス達の方がおかしいのだ。わしはそなた達にもヘカトンケイル達にもそんなことは決してしないからそれは褒美でもない」
「そうなのですか」
「だからだしかし何も思い浮かばぬか」
 ゼウスはあらためてこのことについて考えた。
「それなら
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