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【銀桜】7.陰陽師篇
第1話「雨ニモ負ケズ」
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 江戸の空は灰色だった。
 冷たい雨が降り注ぎ、街歩く人々を濡らしていく。
 ひんやりした空気は外にしか流れてないが、水しぶきが散らばる窓を見るとこっちまで肌寒くなる。
――全く、どこが『晴れ』だ。
 万事屋の窓から見える雨雲を目にしながら双葉は思った。ソファーに座る彼女は食パンにとろけるチーズをのせただけの貧乏じみた『ピザもどき』を口にする。
 テレビに映るのは兄が憧れてるお天気お姉さん。笑顔で「晴れ」と予報しているのに、結果はこの通りだ。
 真逆の天気予報は迷惑の何物でもない。青空を見たくて天を仰げば、淀んだ雲と冷たい雨に叩かれる。あの虚しさをここ数日連続で味あわされると、いい加減うんざりしてくる。
 お天気アナの不調に対する苦情の声も日に日に増していき、ついには『降板』の文字も見え隠れしてきた。また、いきなりの結婚に一年足らずのスピード離婚騒動で彼女から離れたファンも多く、そろそろ潮時だとも言われている。
 だがそれでも兄――銀時がテレビをかじりつくように見るのは変わらない。いや、憧れの人の危機だからこそ「がんばれ!」と朝から声を張って余計気合いをいれて応援しているのだ。
【…今日の『ブラック星座占い』でした。皆さん気をつけてくださいね】
「もちろんですとも!」
 自分に言われてるわけでもないのに、中学生ばりに浮かれる姿は正直痛々しい。
 双葉は呆れ切った冷めた視線を向けるが、銀時は全く気づかない。彼は画面に映る結野アナを瞬きせず見続ける。
【続けて午後からの天気は―】
“ピッ”
【山田くん座布団1枚持ってけ〜】
 いきなり結野アナがハゲのおっさんに変わる。
 何事かと銀時は後ろを振り向くと、リモコンを手にする双葉がいた。どうやらチャンネルを変えられてしまったらしい。
「テメェ!何すんだ!?」
「当たらない天気予報を見たって仕方ないだろ」
「バカヤロー。予報が外れたって癒しの矢は俺の心に命中してんだ。俺の元気の源をとるなァ!」
「そんなどうでもいい天気予報よりピザ占いが見たい」
「そっちがどうでもいいわァ!!いいか双葉。俺ァいつも結野アナのとっびきりの笑顔で一日乗り切る元気をもらってんだ。もちろん、俺だけじゃなくてあの笑顔に救われた奴ァ数知れねぇ。結野アナの笑顔にゃ人を元気づける力があんだよ」
 腕を組みながら銀時は話す。普段のやる気のない姿と比べると、いかに大真面目に語っているのかが分かる。
「ただでさえ依頼がなきゃ収入もねぇ不安定な生活だってのに、最近はたまの改造モップから火炎放射や電気ショックが出るようになってよ、《ババァ(お登勢)》の家賃取り立てから逃げるのにも一苦労するハメになっちまった。おまけに大食いの神楽や勝手にピザ頼む双葉(テメェ)のせいで、残金も減ってくばかりだ。遊ぶ金もなくて疲れだけが
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