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少年少女の戦極時代・アフター
After4 土を泳ぐ殺人魚 A
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 その青年は、いかにも一市民という、これといって特徴のないヒトの姿をしていた。

「あんたが……あの人にあんなこと、したの?」

 だが外見がどうあれ、この凄惨な場で平然としていられる青年が「まとも」だとは、咲には思えなかった。

「あんなこと? ああ、アレ。もうちょいやり様があった気がして俺も不完全燃焼なんだよねえ。オーバーマインドってやつになってから色んなプレイできるようになったけど、最近はマンネリだわ〜」

 青年は茂みへ歩いて行き、三脚の上のスマートホンを取り上げ、コンビニ袋から出した電池型充電器を射した。

「そういうそっちは、ドライバー(それ)着けてるってことは、ロードが言ってたアーマードライダーってあんたたちでいいんだよね。せっかく地球に帰れた俺たちを殺そうとしてる物騒な連中」
「あんたのほうがよっぽど物騒じゃないの! オーバーマインドの力で何人殺したのよ!」
「オーバーマインドになってからはまだ10人は行ってないなあ。それより前は覚えてねえや。――で、さ」

 青年からヘルヘイムの植物が吹き出し、全身を包んで葉を散らした。

 サメだ。通常のサメとは異なり、二足直立歩行のサメのオーバーマインドインベス。歯だけでなく、ヒレも鋭い攻撃をくり出してきそうだ。

『あんたらは、えーと、アーマードライダーグリドンと月花でOK?』
「黒影だ!」
『黒影と月花ね。ま、どっちにせよライダーに遭ったら始末しろってロードには言われてるし〜』
「ロード……?」

 サメインベスの目線が咲に流れた。

『でもそっちのお嬢ちゃんは撮っときたいなあ。絶対イイ顔で泣いてくれるよなあ』

 サメインベスがスマートホンを構えた。

『じゃあまずはそっちのお嬢ちゃんから〜。インベスじゃ男女もオトナコドモもなくてつまんなかったんだよな〜』

 すると、サメインベスはずぷん、と地面に沈んで消えた。
 魚介類なのに土の中が平気なのかと、咲は驚いた――が、そんな隙を見せたのが失策だった。

 咲の足首を、土から生えた腕が掴んだ。

「や、なに、いやっ、このぉっ」

 ざらざらした手は咲の足を離そうとしない。それどころか、サメインベスの手が咲をずるずると土に引きずり込み始めた。

『だーいじょーぶだって。痛いのは最初だけだから。てか痛くなくなってきたら、また別の痛いことしてあげるからさ』
「いや、やだぁ!」
「咲ちゃんッ!」

 引きずり込まれていく咲の手を、城乃内が掴んだ。しかし掴んだだけでは止まらないと城乃内も悟ってか、咲の脇下に両腕を入れ、どうにか穴から担ぎ上げようとした。
 わずかに咲の足が浮くが、そこまでだ。

「くっそー!」
「城乃内くん、はなして! ひきずりこまれちゃうっ」

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