第六章
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「哺乳類だってそうでな」
「爬虫類もな」
「アナコンダ大人しいからな」
「でかいけれどな」
「だから蝶もか」
また言ったハジャカだった。
「こうしたのがいるんだな」
「不思議じゃないだろ」
「考えてみればな」
「そういうことだな」
「そうだな、じゃあこの蝶の生態系はもっと調べていくか」
美しい外見だが花ではなく屍肉に群がりそこに卵を産み喰らうその蝶をだ。
「そうしていくな」
「学者としてな」
「名前は俺がつけるか」
ハジャカは笑って学者の本懐にも言及した。
「そうするか」
「ああ、そうしろ」
ムガジもそのハジャカの背を言葉で押した。
「御前が詳しく調べてるんだからな」
「そうさせてもらうな」
笑顔で応えるハジャカだった、実際に彼はこの蝶の生態系を調べていき命名もした、それが彼の名を昆虫学の分野で永遠に残すことにした。
それで自身の研究室でも多く買った、スタッフ達は部屋の中を飛び回るその蝶と彼等が群がる腐肉の異臭のコントラストに眉を顰めつつ彼に言った。
「いや、奇麗ですけれど」
「これはちょっと」
「匂いがきついですね」
「飼育が大変ですね」
「ははは、お陰で女房や娘に言われてるよ」
ハジャカはスタッフ達に笑って返した。
「俺が臭いってな」
「この肉の匂いがついてですね」
「それで、ですね」
「ああ、そう言われてるよ」
研究の結果そうなったというのだ。
「それで女房にはベッドに入る前に香水かけろって言われてるよ」
「香水ですか」
「それをかけて、ですか」
「ベッドに」
「一緒に寝ても臭いからってな」
こう笑って言うのだった。
「それでだよ」
「そういえばハジャカさんにもですね」
「蝶が寄ってきていますね」
「何か」
「そうだな、まあそれも研究の結果だ」
ハジャカは実際に自分に寄って来るその蝶達を見つつスタッフ達に応えた。
「だからな」
「これもですね」
「いいっていうんですね」
「いいさ、まあ女房娘に最初に臭いって言われた時はこたえたがな」
しかしそれも今は、というのだ。
「ベッドで一緒に寝てくれるし一緒に飯も食ってくれるしな」
「だからですね」
「それならですね」
「いいさ、これからもこの連中とは一緒にやっていくさ」
こう言ってその蝶達と共にいるのだった、美しいが腐った臭いと肉を愛する彼等と共に。
死蝶 完
2015・1・24
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