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死蝶
第三章

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「いざ探すとなると」
「中々見つからない」
「目の前に出て来ないものだよな」
「いざっと時には」
「そう思った時こそね」
「蝶もそうなんだな」
 苦い顔でだ、また言った彼だった。その生物が豊富にいるジャングルの中で。
「いざって時にはな」
「いないな」
「中々ね」
「この星のこの辺りにいるんだよな」
 ここでだ、ハジャカは赤毛の同僚に尋ねた、彼の名をオトモ=ムガジという。ハジャカと同じニジェール生まれだがこの調査隊で一緒になるまで面識はなかった。
 その彼にだ、こう問うたのだ。
「あの蝶は」
「そうさ」
「けれど出て来ないな」
「だから探せばな」
「探す程か」
「ああ、そういうものだからな」
 先程と同じ話だった。
「ここはな」
「探し続けるしかないか」
「あれだよ、こうした場合はな」
 ここでこうだ、ムガジはハジャカに言った。
「出て来ないならな」
「見付けるまでか」
「探せってな」
「生物の発見はそうだよな」
「そうだろ、見付けたいならな」
「見付けるまで探せ」
「だからだよ」
 それで今回もというのだ。
「探すんだよ」
「そういうことだな」
「まあ俺はな」
 ここでだ、ムガジはハジャカに明るい笑顔でこうも言った。
「昆虫じゃなくて哺乳類が専門だからな」
「それもネコ科のな」
「いるぜ、結構」
 赤外線スコープを使って密林の中を見回しながらの言葉だ、その鬱蒼と茂り何がいるかわからないその中を。
「面白いのが」
「ジャガーなりオセロットがか」
「ああ、亜種がな」
 その星のそれがというのだ。
「一杯いるぜ」
「そうなんだな」
「この星は肉食動物も多いからな」
「ジャングルの生態系の中でな」
「ああ、勿論草食動物も多いけれどな」 
 その彼等を餌とする肉食動物達もというのだ。
「ネコ科も多くてな」
「それでジャガーとかもか」
「生態系は本当にアマゾンだな」
 熱帯の中でもというのだ。
「植物もそんな感じだしな」
「確かにな」
 ハジャカは密林の木々、それに草も見て応えた。それは確かにアフリカや東南アジアのジャングルよりはそちらだった、地球で言うと。
「ここはそうだな」
「そうだろ、だからネコ科もな」
「ジャガーとかオセロットか」
「そんな感じだよ」
 そうした生物がというのだ。
「一杯いるよ」
「そうか、まあ虫もな」
「いることはいるな」
「ジャングルらしくな」
 こうムガジに答える。
「蝶もしょっちゅう見るな」
「色々なのがいるな」
「けれどな」
 それでもだった。
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