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メフィストの杖〜願叶師・鈴野夜雄弥
第三話
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「今回も上々…と言ったところか。」
「理事長。今日入院手続きをされたあの方も…きっと…。」
「そうだな。どうせ金の有り余っている奴等だ。そいつらからたんまり貰わんと割に合わんからなぁ。」
「ええ。庶民なんて片手間に見てやれば充分。私達は…ねぇ。」
 ここは金久総合病院の理事長室。そこで今、二人の人物が話をしていた。
 一人は理事長の金久源三郎、もう一人は院長の水中典夫だ。
 二人の前にある理事長の机には、中程の茶封筒が幾つか置かれ、そこから多額の紙幣が顔を覗かせている。
「何はともあれ、良い薬はその価値に合った人物に投与すべきだな。何、権力にしがみつく奴ほど、他言することなどない。我々は安泰だ。」
「そうですな。ですが理事、地下の施設をもう少しばかり良くすれば、もっと…」
「分かっている。いつまた新型のインフルエンザが流行しても対処出来るよう、私が私費でやってやる。ま、あっという間に帰ってくるだろうがな。」
「インフルエンザ様々…ですなぁ。」
 そう水中が言うや、二人は嫌な笑みを見せた。
 ふと、そこにドアをノックする音がしたため、金久は「入れ。」と短く言った。すると、そこから一人の女性が入ってきた。
「理事長、森下議員からこれをお預りして来ました。」
 彼女が持ってきたものは、机に置かれていた茶封筒と同じものだった。
 金久はそれを受けとると、直ぐ様中を確認し、持ってきた女性にこう言った。
「山瀬看護師長、彼の息子に新薬を。」
「はい。この間、臨床試験を終えたあれで…宜しいんですね?」
「そうだ。一応は有栖川君にも伝えてくれ。」
「畏まりました。」
 そう答えるや、その女性…看護師長の山瀬は出ていったのだった。

 この金久総合病院では、常時「金」が全てだった。人間の命は尊い…などということは微塵もない。むしろ、そんな考えは負け犬のすることだと考えている場所なのだ。
 そのためか、この病院の地下には研究施設が作られていた。新薬やワクチンの研究を主とした施設だが、そこで開発された薬の臨床試験は彼らが“庶民"と呼ぶ一般的な患者を検体にして行い、成功すれば権力者や資産家などに法外な値で投与している。無論、その全てが違法だが、彼らはそう考えはしない。見付からなければ全て合法…それが彼らの考えなのだ。
 勿論そんな筈はないが、金久が病院を立ち上げてから四十年余り…未だに見付かっていない分、彼らは巧く遣っていると言えた。
 この病院の主要な四人、理事長の金久、院長の水中、看護師長の山瀬、外科医の有栖川は、金への執着で集まった。
 金久と水中は病院設立当初からだが、山瀬と有栖川は十年ほど前からだ。この二人は未だ三十代前半で、有栖川は金久がその力で引き抜いた実力者だった。
 有栖川は外科医としては天賦の才を謳われ、
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