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メフィストの杖〜願叶師・鈴野夜雄弥
第三話
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も怒鳴る金久に、男はさも可笑しいと言った風に答えた。
「これは失敬。」
 すると、部屋の中に蒼白い焔が広がり、その男の姿をはっきりと浮かび上がらせた。
 それは先程の男とは違い、金の髪にシックなスーツ、そして頭にはシルクハットと言う出で立ちだった。それは三人を困惑させ、そして再び震え上がらせるには充分な演出だった。
「…ぉ、お前…何者だ…。」
 水中は怯えながらも、どうにか男へと問った。
 すると男は笑みを見せ、シルクハットを取って三人へと言った。
「私はミヒャエル・クリストフ・ロレ。“メフィストの杖"って言った方が分かるかな?」
 その答えに三人はまさかと言わんばかりの表情を浮かばせた。
 ロレはそれに反応することなく、再び言葉を紡いだ。
「ちょっと君達に聞きたいことがあってね。でも、聞くまでもなく分かったよ。君達、ちょっと遣り過ぎたようだね。」
 ロレはそう言って三人へと近付くと、恐怖に耐えかねた山瀬が慌ててふためいてドアへと走った。すると、今まであった筈のドアは壁へと変わり、山瀬は余りのことに失禁してしまった。
「駄目だなぁ。今まで散々甘い汁を吸ってきた者同士、仲良くしなくちゃ。」
 そう言って微笑するロレに、三人は心底ゾッした。

- こいつは…この世の者じゃない…。 -

 三人は改めてそう確信した。いや、そうせざるを得なかった。
 三人が恐怖に喘ぐ中、その周囲から何やら影らしきものが立ち上がり、それらは三人を取り囲む様に次々に現れた。
「な…!?」
 目の前の男一人どうすることも出来ないというのに、今度は得体の知れない多くの影…。三人は気が狂うかと思えたが、そうはならなかった。正直、気が狂ってしまえば良かったと言える。
「こ…これは…。」
 金久が後退りしながらそう呟くや、影達は一斉に喋り始めた。

- 実験台にしやがったのか…! -
- なぜ…私は死んじゃったの? -
- 娘に…娘にもう一度会いたい! -
- 死ぬのは嫌だ!死ぬのは嫌だ!死ぬのは嫌だ! -
- 俺の内臓…どこやったんだよ…なぁ…! -

 その影は…ここで実験台にされて死んだ者達の声だった。
 金久には判らないまでも、その中の幾つかの声に山瀬と水中は覚えがあった。
「いや…違うの!屋田さん、あれは私の指示じゃないのよ!!」
「許してくれ!私だけでは最早止めようもなかったんだ!!」
 山瀬と水中は涙を流して床へ頽れたが、影は容赦なく責め立てる。
 しかし、金久はそれに憤慨して言い放った。
「死んだ奴らに何の価値がある!お前らは死んで当然!データとして残されてるのだから有り難く思え!!」
 その声に影達はピタッと動きを止めた。だが、今度は憤慨している金久へと無言で集まって行き、その体へと折り重なる様に纏わり付
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