暁 〜小説投稿サイト〜
ワンピース〜ただ側で〜
番外最終話『絆は終わらない』
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 なんでだよ。
 なんで立てるんだよ。

 目の前の光景に、正直なところこわかった。

 ルフィもゾロもサンジにも、俺にはない強さがあるのは知ってる。もう限界を超えてるのも知ってる。俺ならもう動くことすら出来ずに他のみんなのように倒れてるだけだ。ゾロが倒れてくれたことだけは本当にホッとしたけど、だからこそ似たような体力のはずのルフィとサンジが倒れない今の光景が……怖い。

「……俺は絶対に認めねぇぞ、てめぇを」

 5千枚瓦回し蹴りを横っ面に叩き込んだんだ。なのに、なんでまだ歩ける? 死んでもおかしくない威力があるんだぞ、あの蹴りは。
 目がうつろ。足はふらついて、口を開く度に零れる血は止まっていない。なのに、サンジの視点がずっと俺に固定されていて動かない。サンジは、倒れない。

「てめぇを絶対にみとめねぇぞ! このクソ甚平が!」

 なんで、何を認めないんだ?
 お前、俺が船から離れることにそんなに反対する理由があるのか? 何がお前をそうさせる?

首肉(コリエ)!」
「っ!?」

 虫の息とは思えないほどの鋭い蹴り。それに驚いて大げさに避けてしまった。これで限界だろう、ゾロみたいに早く倒れろよ。
 なのに。

肩肉(エポール)! 背肉(コートレット)! 鞍下肉(セル)! 胸肉(ポワトリーヌ)! もも(ジゴー)

 嘘だろ!?
 なんで動けるんだよ!
 受ける。避ける。逸らす。それら全部を受けること自体は難しくはない。なのに、どうしてか受けるたびに腕がしびれる。避けるたびに体が重くなる。逸らすたびに、それが困難になる。
 なんだよ、これは。

羊肉(ムートン)ショットぉ!」
「っ」

 蹴りに拳を合わせた。顎を打ち抜く。

「これで、あと……はっ!?」

 サンジが立った。
 俺の服をつかんで、そうでないともう立っていられないのだろう。足を震わせて、肩を震わせて、それでも俺へと顔を寄せて、サンジは言う。

「ナミさんを……てめぇ、泣かせる気かぁっ!! クソ野郎っ!」

 ――っ!?

 その言葉の衝撃に、動けなかった。
 限界を超えて、ついに崩れ落ちるサンジ。けれど、まだだった。
 崩れる体が地面と垂直に回転してからの、かかと落とし。

粗砕(コンカッセ)!」

 速さは今まで通り。避けられないはずがない。なのに、喰らってしまった。あえて避けなかったとか、そんなわけじゃない。ただ単純に避けることが出来なかった。無防備にサンジの蹴りを喰らえばいくら俺でも吹き飛ばされるし、ただじゃすまない。けど――

「……え」」

 ――まるで子供に殴られたのかって思うぐらいに、痛みすらなかった。

「ち、く……しょう……ルフィ、任せたからな!」


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