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至誠一貫
第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十 〜徐州での一夜〜
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の。今は、赴任の途中でね」
「そうだったの。……でも、土方様。私などご一緒させていただいても宜しいのですか?」
「構わん。揚州までの道中、一人では心細かろう?」
「…………」

 何やら思案する諸葛瑾。

「それに……曹操さん、絶対郁里さんに目をつけると思いますよ」
「え? 私に?」
「そうです。賊軍相手とは言え、この県城を守り通したのは郁里さんの才覚です。曹操さんの噂……ご存じでしょう?」

 確かに、諸葛瑾ならば華琳の眼鏡に適うな。
 才能としてもそうだが、容姿も朱里に似て、愛らしい。
 まさしく、華琳の望む人材像と言える。

「本当は、私と一緒に来て欲しいけど……。でも、せめてご主人様のご厚意だけでも受けて貰えないかな?」
「……では、お世話になります。揚州まで、宜しくお願い致します」

 事情はわからぬが、睡蓮と何か約定があるようだ。
 ……華琳には悪いが、本人の意思を尊重させて貰う事としよう。



 その夜。

「さ、どうぞどうぞ」
「……失礼する」

 私は、県令の自宅へと招かれた。
 救援に対する礼、という事であったが……。

「おお、お見えになったようだな。ささ、入られよ」
「待っていたわ。席はそこよ」

 上座にいたのは、曹嵩と華琳。
 命令系統が違うとは申せ、華琳は州牧であり、曹嵩はその父親。
 この場にいれば、県令よりも上席になっても不思議ではない。
 ……だが、ただの礼の為に催された場ではなさそうだな。
 卓上には、手の込んだ料理が並べられている。

「では、乾杯と参りましょうかな。皆様、杯をお取り下さい。乾杯!」
「乾杯!」

 県令の音頭で、宴が始まった。

「ご挨拶が遅れましたな。ワシは曹嵩と申します」
「ご丁寧に痛み入ります。拙者は土方と申します」
「まま、堅苦しい挨拶はこのぐらいにして。まずは一献」
「……は」

 曹嵩は、機嫌良く勧めてきた。

「お父様。歳三はあまり強くないの、無理に勧めないで」
「ほ、そうか。土方殿、いつも我が娘が世話をかけておるようで」
「いえ。華琳殿には、寧ろ目をかけていただいている方が多うござる」

 執拗な華琳への皮肉を込めたのだが、当人は平然としている。
 意図には気付いたようで、眼がそう物語っているが。

「さ、料理も冷めないうちにどうぞ。私が取り分けてあげるわ」
「おお、曹操様自らなさらずとも」

 慌てて、県令が使用人に合図するが、華琳はそれを手で制して、

「この程度の事、自分でするから平気よ。気を遣ってくれて申し訳ないけど」
「は、はぁ……」

 その間にも、手際よく料理を取り分けていく華琳。
 盛りつけ一つにも、美意識が働いているのか、全く粗雑さ
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