番外26話『デービーバックファイト』
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いはずがなく、この島であと20年一人で待つという選択肢しかない。
「……淋しいぞ?」
「20年はさすがに長いんじゃないか?」
ルフィやハントがそれでいいのか? という表情で尋ねるが、トンジットには実質手段がなく、力なく「いいさ、ここで20年待つ」と笑顔を浮かべる。あまり明るいとはいえないような湿った空気の中、そこでチョッパーが気付いた。
「……あれ? もしかしてウ〜〜〜マって馬か?」
「ん? あ、そうか、馬ならいたな!」
ルフィたちがトンジットによって招かれたテントの裏。そこにいたやはり一般的なそれよりも明らかに体が長い馬、シェリーに遭遇していた。
「おお、シェリー! お前……俺を待っててくれたのか!?」
10年もの間、地上にいなかった自分を待っていてくれる友がいた。しかもあと20年ほど一人で生きていかなければならないと覚悟をした瞬間に出会えた。トンジットにしてみればこんなに嬉しいことは無いだろう。
いや、嬉しいのはもちろんトンジットだけではなく、シェリーもだろう。トンジットが行方不明になって10年。トンジットが生きていることすらも半ば諦めていたような時にそのトンジットが目の前に現れたのだ。他の遊牧民にトンジットを諦めて一緒に行こうと言われてもかたくなに拒み、この10年をたった一人で過ごしてきたシェリーにとっても、これほどに嬉しいことは無いはずだ。
シェリーのいななき。
草原を走り抜ける蹄の足音。
シェリーの背中から聞こえるトンジットの笑い声。
「そうかー、あの馬ここでずっと竹馬のおっさんを待ってたのか」
「いいやつだな」
「きっと竹馬のおっさんのことが大好きなんだ」
「ほんと……楽しそうだ」
それらを、草原で寝転がりながら4人は見つめている。
「しっかし速ぇぞ、あの馬! 俺も乗りてー」
「ホントに優雅に走るもんだな」
ウソップの言葉の通り、体の長い白馬が緑の草原を駆け抜けるサマは確かに優雅だが、それ以上に余程トンジットを背中に乗せられることが嬉しいのだろう。トンジットとシェリーの笑顔が4人の気持ちを見ているだけで幸せにする。
なんとなしに笑顔になる4人だが、そこでフとハントが呟く。
「なぁ、シェリーは10年間待ってたんだよな……竹馬のおっちゃんのこと」
「うん、そうだな」
チョッパーが頷き、ハントはどこか遠い目をする。
――こういうの……いいよな。
隣でシェリーの駆け抜けるサマを楽しんでいるルフィを横目で見る。
もしもこの航路を辿らなければロングリングロングランドに麦わら一味が来ることは無かった。もしもルフィがこの島に来て長い竹をおらなかったら、トンジットとシェリーは未だにお互いに寂しい思いをしていたはずだ。
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