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メフィストの杖〜願叶師・鈴野夜雄弥
第二話
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の時のことを思い出す。
「・・・やっぱ忘れらんねぇよな・・・。」
 夕に染まる景色を眺めながら、ふと大崎は誰に言うでもなく溢した。その意味を知る鈴野夜は、ただ静かに彼の見る景色を共に眺めた。
 暫くすると、また大崎は独り言の様に口を開いた。
「あの時、もし俺が死んでたら・・・こんなことにはならなかったんかな・・・。」
「馬鹿を言うな。」
 その言葉に、鈴野夜は直ぐ様返した。
「私は君が生きていて嬉しい。確かに、二人共無事だったら良かった。だがあの時、既にどうなるかなんて決まっていたんだ。それは自然の理だ。受け入れるにせよそうでないにせよ、後戻りなど出来はしない。ならば、この先をどうより良く生きるかを考えるべきだ。私達に出来ることを精一杯やり遂げる・・・それが生きる者の責務なんじゃないかな。」
 鈴野夜がそこまで言い切った時、不意に大崎が吹き出した。
「・・・ッ!?」
 あまりのことに、鈴野夜は呆気にとられて眉をピクつかせた。
「大崎君・・・。」
「いや、悪い。雄の口からそんなセリフが出るなんて・・・ブッ!」
「失敬なっ!」
 鈴野夜は珍しくプリプリと怒っている。と、そこへ玄関の開く音がしたと思ったら、誰か二階に上がってくる足音がした。
 二人は孝だと思って見ていると、そこには的外れの人物が顔を見せた。
「杉兄!」
「瑶子ちゃん!?」
 顔を見せたのは、孝の娘の瑶子だった。二人は十年ほど会ってなかったため、その成長ぶりに目を丸くした。
「あんなに小さかった瑶子ちゃんが・・・。」
 感無量・・・と言った風に言う大崎に、瑶子は苦笑して返した。
「十年も音沙汰なかったんだから、当たり前でしょ?」
「そりゃそうだ。ってか、随分早かったな。」
「仕事早く終わらせて飛んで来たのよ?全く・・・雄兄も全然連絡くれなかったしね?」
「今度は私か・・・。」
「当たり前でしょ!連絡先も知らせずに行ったから手紙も出せなかったし。本当、寂しかったんだからね!」
「ごめんなさい。」
 そう言った二人の声が重なったため、瑶子は可笑しくなって笑った。本当に会いたかったようだ。
 それから暫くは他愛ない話をとりとめもなくした。
 十年分・・・話題が尽きることはないが、三人はその話題の多さに、逆に時の壁を感じることもあった。
 談笑しているうちに日も落ち、そこへもう一人顔を見せた。
「こんな暗いとこで電気も点けんで、お前達は何しとるんだ。」
 やって来たのは孝だった。孝はそう言って電気を点けて笑っていた。
「後でシズさんと明子さんが来るから、飯は気にするな。今日はゆっくりしてろや。」
「ありがとうございます。」 大崎と鈴野夜がそう答えると、瑶子は何か思い付いた様に口を開いた。
「ねぇ、花火やろうよ。昔は庭でよくやってたんじゃな
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