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至誠一貫
第一部
第五章 〜再上洛〜
六十三 〜州牧〜
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 中に入り、改めて全員に茶が供された。
「な、何となく散歩していたらさ、黒装束の怪しげな奴らが走っていくのが見えてさ。後を追ったら、土方を襲おうとしていたんだ。だから……」
「助太刀をした、という事か。忝い」
「い、いいってそんなの。……恥ずかしいだろ」
 赤くなる馬超。
「危ういところでした。奴ら、毒矢を歳三殿に放とうとしていました」
「疾風。素性はわかるか?」
「……いえ。身元の証になるような物は何も」
「……そうか」
「お師様を狙うなんて、何て不届きな!」
「ひ、姫。確かに赦せませんけど、まずは落ち着きましょうよ」
 怒りが収まらぬ麗羽を、斗誌が必死に宥めている。
「しかし、崔烈殿か。寡聞にして私は初めて会う事になったが」
「……それはそうでしょう。太尉の地位にある御方ですが、それは全て金の力によるものですから」
「銅臭政治、って奴か。母様からは聞かされていたけど、胸くそ悪い奴だな」
 疾風の言葉に、馬超も憤怒を露わにする。
 つまるところ、金次第で何でもする輩、という事か。
 ……黒幕は、確かめるまでもあるまい。
「歳三アニキ。そういや、姫に何か用だったんじゃないですか?」
「おお、そうであった。麗羽、このような物が、馬騰のところに投げ込まれたというのだが」
 件の怪文書を、懐から採りだし、麗羽に手渡した。
「そうなんですの、馬超さん?」
「ああ、間違いない」
「では、失礼しますわ」
 麗羽はそれを広げ、一読する。
 ……そして、その手が震え出した。
「董卓さんとお師様が? 馬鹿げているにも程がありますわっ!」
 怪文書を、床に叩き付ける麗羽。
「あの……。私も、見せていただいて宜しいでしょうか?」
「うむ。猪々子にも見せてやれ」
「はい」
 並んで書を覗き込む斗誌と猪々子。
「麗羽。では、お前のところには届いていないと申すのだな?」
「当然ですわ。もしそんな不届き者がいたら、草の根を分けてでも探し出しているところですもの」
 となると。
 私と月は当然として、私と麗羽のつながりも熟知している者の仕業、と見て良いな。
 ……ふと、馬超の手に、血が滲んでいるのを目に留めた。
「馬超。怪我をしているようだが?」
「え? ああ、大した事はないさ」
「いや、血止めをして消毒をせねば、破傷風の原因ともなる。麗羽、酒はあるか」
「ええ。お師様のお酒が宜しいですか?」
「頼む。それから、清潔な布も」
「わかりましたわ。斗誌さん」
「は、はい! すぐにお持ちします!」
 私は、馬超の傍に屈んだ。
「傷を見せてみよ」
「い、いいって! こんなの、唾でもつけときゃ治るからさ」
「駄目だ。鈴々、猪々子。馬超を抑えてくれぬか?」
「合点なのだ♪」
「はいはいっと」
 
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