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極短編集
短編21「雨男」

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 朝、玄関で3歳になる息子と妻がなにやらもめていた。

「雨の日に出てくる男なんだよ!」

 息子は、そう言って家から出るのを嫌がっていた。

「どうしたんだ?」

 僕は妻に尋ねた。

「絶対に家から出ないって言うのよ」

 妻は、ほとほと困り果てていた。

「なんだい?どうした?」

 僕が息子に尋ねると……

「雨の日は、雨男が出るんだよ!」

 と、息子は言った。
 息子の話しからは分かったのは、雨男とは雨の日に、水たまりから出てくるらしい。

「誰から聞いたの?」

「お友達。怖いから出るの嫌だ!」

 その日は、パパも一緒に行くということで、なんとかなだめて送り出した。その日の雨は、夕方には上がった。
 雨あがり。酔っ払って帰る道。面倒くさくて道路を渡ったその時……

「!!!」
◇◇◇

「で、どうなったの?」

「水たまりから雨男が出てきて、助けてくれたんだよ!」

「えーっ!雨男が!?」

 昨夜は車にひかれる所だった。

「だから、パパは……雨男はいいやつだと思うよ」

 と、息子に話した。
 今日も雨。でも息子は雨の中……



「行って来ま〜す!」

 と、安心して出かけていったのだった。

おしまい

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