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極短編集
短編2「宇宙に続くドア」

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 僕は宇宙へつながっているドアを知っている。そのドアは、とあるビルにあるドアだった。ビルとビルの狭い間を抜けると、ビルの裏にドアがあった。そのドアが宇宙につながっていた。
 深夜、酔っ払って、道を間違えてた時に、たまたま見つけたドア。開けると、そこには輝く宇宙が広がっていたのだ。
 初めて見つけた時の僕は、それがなんだか分からなかった。ポスターか何かと思った。でも、無数の光が光り輝いていた。試しに、近くにあった空き缶を投げ込んで見た。空き缶は、そのまま音もなく、ただひたすらに真直ぐ進んで、見えなくなった。そして、目の前に広がっているのは、テレビや図鑑でみた宇宙だと気付いたのだった。僕はさまざまな宇宙の姿を見た。

 銀河の帯。紅く輝く星。巨大星雲もあった。

 僕は手を入れてみたくなった。しかし昔、学校で『真空』を習った時、真空管のなかで、風船が膨張するのを見たのを思い出し、思いとどまった。取りあえず、僕は煙草を吸った。

『そうだ!』

 煙草の先を入れてみよう!さてさて、どうなるだろうか?そうしてやってみると、煙草は案の定、ドアの入り口、空間の真ん中で、ふっと消えてしまった。
 僕はそれから、時々ここに来てドアをのぞいていた。ある日、来る途中の公園で拾った、30センチほどの長さの枝を差し入れてみた。引き戻すと枝は、カチカチに凍っていた。   
 僕は、ウオッカのビンを直接口にあて、広大な宇宙を眺め、心癒していた。今夜のつまみは、マゼラン星雲だ。
ある日。この世が嫌になった僕は、このドアの向こうに行こうと思った。

『きっと、一瞬で終わらせてくれる!!』

 そう思い、ドアを開けた。真っ暗だった。星の光は、全くなかった。僕は、今夜はブラックホールだと思った。僕は、ドアの向こうに飛び込んだ……






「ダメだよ〜!勝手に入っちゃ〜」

 その途端、誰かに注意されてしまった。

パチッ

 と、点いたまばゆい明かりに目がくらんだ!

「勝手に倉庫に入らないでね!」

 そこには、初老の警備員がいた。僕は、警備員に頭を下げながら、入って来たドアから出ていった。
 街の雑踏の中、空をあおいだ。都会の灰色の夜空には、『星』は見えなかった。歩道橋を上がる。幹線道を車が走っていくのが見える。テールランプは、流れ星のようだった。きっと、飛び込めば終わる。でも、僕は滑稽な気持ちになった。

『マゼラン星雲とともに死のうと思ったのに……こんな、地上の雑踏の中では死ねないなあ』

 僕はふと……



 もう少しここでやって行こうと、思ったのだった。

おしまい

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