PHASE01…3
[8]前話
「だからぁ、そういうんじゃないってばーっ」
華やいだ嬌声が上がる。大学のレンタルエレカポートで騒いでいる少女たちの中に、フレイ・アルスターの姿を見つけ、レンは嫌そうな顔をし、キラの鼓動は一瞬高まった。
長くつややかな髪は燃えるような赤、肌はミルクのようになめらかで、今はかすかに上気している。高貴さを感じさせる整った顔立ちと、しなやかな立ち居ふるまいが、大輪の薔薇のような華やかさを感じさせた。たくさんの少女の中にいても、ぱっと人目を引く存在だ。彼女の姿を見ると、キラの心臓はいつも勝手に暴れはじめる。ろくに口をきけもしないのに。
「あ、ミリアリア!ねぇっ、あんたなら知ってるんじゃない?」
フレイを囲んでいた女の子たちが、こちらに気づいて話しかけてくる。その後ろで顔を赤くし、「もうっ、やめてってばぁ!」とフレイが叫んだ。だが友人たちは取り合わない。
「この子ね、サイ・アーガイルから手紙もらったの!なのに『なんでもない』って話してくんないんだよーっ」
「えぇ〜っ??」
伝染したみたいに、ミリアリアもすっとんきょうな声を上げた。
彼女らがさらにフレイを問い詰めようとしていたとき、レンの背後から落ちついた声がかかった。
「ーー乗らないのなら、先によろしい?」
サングラスをかけた女性と、その後ろに二人の男性が立っていた。声をかけたのは先頭の女性だ。いずれも若く、二十代前半から半ばというところだろう。だが、学生には見えなかった。発された言葉は丁寧だったが、彼女の口調や声には妙な威圧感があり、若い女性らしい柔らかさを拒絶したような、硬く鋭い雰囲気を漂わせていた。
「あ、すいません。どうぞ」
トールが頭を下げ、みな気まずい思いで先を譲ると、彼らはきびきびとした動作でエレカに乗り込み、走り去った。ばつの悪い雰囲気を振り払うように、
「もう知らない!行くわよ」
フレイが叫び、次のエレカをつかまえる。連れの少女たちが口々に「まってよぉ」などと言いながら、騒がしく後に続いた。
ポートが静かになると、突然トールてレンが、ばん、とキラの肩を叩いた。
「なーんか意外だよなぁ、あのサイが」
「強敵出現だな、キラ」
「は?な、なに……」
戸惑うキラに、ミリアリアも「がんばってね」て笑いかけ、トールとレンに続いてエレカに乗り込んだ。
「ま、待ってよ。ぼくは別に……」
一人しどもどするキラだった。
[8]前話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ