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メフィストの杖〜願叶師・鈴野夜雄弥
第一話
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「鈴野夜…。」
「う…っ!」
 ここは喫茶バロック。そこで今、鈴野夜はオーナーである釘宮に鬼の様な形相で睨まれていた。
「あの…ですね…。これには深い訳が…。」
「ほほぅ?大切なオーブンを壊す程の訳とは何だ?」
 どうやらオーブンを壊したらしい。ま、鈴野夜だけでなく、あのメフィストも関わっているのは明らかだが、ここにメフィストの姿はなかった。逃げたらしい…。
 鈴野夜は額に汗を滲ませてひたすら目を游がせている所へ、何も知らずに小野田が入ってきた。
「お早うございます。あれ?どうしたんですか?」
 鬼の形相の釘宮と顔面蒼白な鈴野夜を見て、小野田は一体何事かと目を丸くした。
「小野田さん、お早う。気にしなくて良いよ。この世界一の愚か者が、うっかりオーブンを壊しちゃっただけだから。」
 その刺々しい言葉に、もう鈴野夜は号泣寸前だった。
「えぇ!?あれなくちゃ困るじゃないですか!」
「ま、そうだけどねぇ。」
 そう言いつつ、釘宮は再び鈴野夜へと視線を変えると、彼はもう少しで悲鳴を上げそうだった。小野田には笑顔だったのに、鈴野夜に向いた途端に般若になったのだから…仕方無い話だ。
「つ…罪を許せって言うだろう?な?」
「お前がそれを言うか。どの口が言うんだ?ん?」
「ヒィ…!!」
 更に恐ろしい形相となった釘宮に睨まれ、もはや鈴野夜には成す術がなかった。
 だがその時、ふと小野田が言った。
「仕方無いんで、実家に聞いてみますね。」
「…え?」
 その言葉の意味が分からず、釘宮と鈴野夜は小野田を見た。すると、彼女は携帯を取りだして何処かへ電話をかける所だった。恐らくは、さっき言っていた実家だろう。
「もしもし?あ、父さん?うん、元気元気。えっとそれでさ、今働いてる喫茶店のオーブンが壊れちゃって…ん、そう。え?中古だったら直ぐに持って来れるの?それちゃんと使えるのぅ?え?確認はしてあるんだ。それっていくら?…二十万?高いわよ!中古でしょ!?…ダメ、もっとよ!…っと、少し待って。オーナー。」
「…えっと…何?」
 あまりの展開についていけない釘宮は、小野田に向けて間の抜けた返答をした。さっぱり状況が掴めていない様だ。
「中古なんですけど、十二万でかなり性能の良いオーブンあるって言うんですけど、それで大丈夫ですか?」
「え?そんなに安くしてくれるの?」
「これでも高いわ!」
 小野田は納得してない様子だが、釘宮にとっては渡りに船だ。
「えっと…そうだね。お願いしようかな…。」
 釘宮が顔を引き攣らせながら答えると、小野田は未だ納得してない風だったがコクンと頷いて電話を再開した。
「父さん?うん、それ直ぐに持って来て。勿論、取り付けもお願いね。分かったわ。それじゃ、待ってるから。」
 小野田はそう言って電話を
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