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メフィストの杖〜願叶師・鈴野夜雄弥
第一話
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[2]次話


 その時、彼に問い掛ける声があった。
 彼は薄れ行く意識の中、その声がこの世ならざる者の声だと理解した。
 だが、それが何処からくるものか分からなかったが、次の問い掛けは確りと聞き取れた。

- 何故、汝は死のうとするや? -

 彼はその問いに心の中で答えた。自分には何もなく、この世には何もないのだと。

- 我が傍らにあれ。我が汝に力を貸そう。我と共に生きる気はあるか? -

 その問いに、彼は何と答えるべきか分からなかった。それは悪魔の甘言か、はたまた神の導きか…彼は迷った。
 そんな彼に対し、声の主は自らをこう名乗った。

- 我が名はメフィストフェレス。在りし日へ還ることを願い続ける者。 -

 彼は途切れそうな意識の中、なぜ自分を助けようとするか問った。すると、メフィストと名乗るそれはこう答えた。

- 汝は地獄に堕つる者ではない。 -

 その哀しげな声に、彼はメフィストの伝承を思い出した。それ故に、彼はこう答えた。


「生きよう…。」





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