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剣を手に
6部分:第六章

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第六章

「あいつだ!」
「グレンデルだ!」
「死んだんじゃなかったのか!」
「いや、あいつは死んだ」
 それは間違いないとだ。ベイオウルフは言うのだった。
「それは間違いない」
「じゃあやっぱりですか」
「あいつの家族ですか」
「それが来たんですね」
「そうだ。それだ」
 まさにそれだと応えるベイオウルフだった。
 そしてそのうえでだ。彼は声がした方に向かった。
 そこに行くとだ。グレンデルと同じ姿だが彼より一回り大きな巨人が暴れていた。その巨人に対してベイオウルフが言うのであった。
「腕を取り戻しに来たか」
「そうだよ」
 返事はだ。女の声で為された。
「そうする為に来たんだよ」
「そうか。やはりな」
「息子は死んだよ」 
 そしてだ。女巨人はこう言ったのだった。
「傷があまりにも深くてね」
「そうだろうな。あの傷ではな」
 そうなって当然だと。ベイオウルフも返す。
「そうならない筈がない」
「御前だね」
 女巨人はその赤い目でベイオウルフに問うた。
「御前が息子を殺したんだね」
「その通りだ」
 バイオウルフは女巨人を見上げて答えた。
「この剣でだ」
「息子の腕を斬ってそれで」
「全て俺がした」
「それならね」
 どうするかとだ。女巨人は憎しみで燃える目で言ってだった。
 その禍々しく伸びた爪と牙でだ。彼に襲い掛かるのだった。
 彼は巨大な剣でだ。それに応えたのだった。
「行くぞ」
「むっ!?」
「貴様もまた倒す」
 巨大な剣を構えて言うのである。両手に持ち。
「この俺がだ」
「仇を取らせてもらうよ」
「貴様の息子はここに夜な夜な来て人を食った」
「それが悪いっていうのかい」
「許せぬことだ。だからだ」
 斬った。そうしたというのだ。
 その話をしてだった。女巨人は爪を振り回す。それでベイオウルフを引き裂かんとする。
 だが彼はそれを全て剣で受け止めて。それからだった。
 女巨人の一瞬の隙を衝いてだ。一気にだった。
 下から上にだ。剣を思い切り突き上げた。その一撃は。
 女巨人の腹を貫いた。深々と突き刺さった。
 それを受けてだ。女巨人は。
 口からどす黒い血を吐き出しだ。忌々しげに言うのだった。
「やってくれたね」
「勝負ありだな」
「こんなところで」
 死ぬつもりはないとだ。女巨人はまた言った。
「忌々しいがね」
「どうするつもりだ、それで」
「帰らせてもらうよ」 
 剣を握った。握ったそこから血が出るがそれに構わずだ。
 それを己の腹から引き抜く。血が噴き出る。
 その血をそのままにして。女巨人は逃れたのだった。
 その彼女をだ。ベイオウルフは追おうとする。その彼にだ。

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