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剣を手に
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第一章

                        剣を手に
 王宮で。厄介なことが起こっていた。
 湖から出て来る不気味な巨人がだ。王宮の者達を襲い餌食にしているのだ。そのことは王宮だけでなく国全体で問題になっていた。
 それでだ。王もだ。
 家臣達にだ。こう話すのだった。
「このままではだ」
「はい、無駄に人が殺されていくだけです」
「こう夜な夜な出て来てです」
「それで殺されては」
「どうしようもありません」
 こう話す周囲だった。そうしてだ。
 彼等もだ。見ればだ。数が少なかった。
「我等も何人も喰らわれていますし」
「我等大臣達だけでなく騎士達や兵達もです」
「多くが喰らわれています」
「このままでは国自体がです」
「成り立たなくなる」
 王もわかっていた。このことが。
 それで今だ。少なくなった大臣達に話すのだった。
「だから何とかしたいが」
「しかしです。あの巨人はです」
「グレンデルと名乗っていますが」
 巨人は人の言葉を喋れる。知能もあるのだ。
 その知能と力でだ。王宮を襲っているのだ。
 だからこそ厄介だった。そのグレンデルという巨人は。本来は豪奢で優美に包まれている王宮はその巨人の為に沈みきっている。
 その中でだ。彼等は王に話していく。
「何とかせねばなりません」
「倒さなくては国が滅びます」
「そうなってしまいますが」
「それでも」
「どうすればよいのだ」
 王の言葉は苦いものだった。
「あの巨人を倒せる者はいるのか」
「既に何人も餌食にされています」
「見事な騎士が」
 戦うべき彼等ですらだ。餌になっているというのだ。
 それではどうしようもない。そういう話になっていた。
 だがここでだ。王の間にある男が入って来た。
 見事な金髪を短く刈り青い目は強い光を放っている。逞しい長身に四角い厳しい、岩石の様な顔、その若者が来たのだ。
 質素な青いズボンと上着、それにマントは戦う者に相応しい質素な服装だった。その彼が王の前に来て片膝を折りだ。こう言ってきたのだ。
「王よ、ここは」
「そなたが行くというのか」
「はい」
 こうだ。その若者は外見に相応しい低く強い声で言うのだった。
「そうさせてもらいたいのですが」
「ベイオウルフ、そなたが行くのだな」
「その巨人、グレンデルですね」
「うむ、それがその巨人の名だ」
「旅先でも耳に入っていました」
 実は彼、ベイオウルフはこれまで旅に出ていたのだ。国に戻ったのはついこの前だ。その彼がだ。王に対して言うのである。
「禍々しい相手ですな」
「そして強い」
「はい」
「どうにもならないが」
「いえ、私が倒します」
 ベイオウルフは言い切った。
「必ずや」
「できるというのか」
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