第一部
第五章 〜再上洛〜
五十五 〜覇王の思惑〜
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目。力ずくで押し通る故、見事防いでみせよ」
途端に、華琳の顔色が変わる。
「な……。貴方、正気なの? この人数相手に、貴方達二人で突破出来る訳ないじゃない!」
「だが、私とてやすやすと取り抑えられるつもりはない。それに、仮に小さな騒ぎとは申せ、その最中に出立出来ぬのは華琳、お前も同様であろう?」
「私を脅すつもりなら無駄よ。その程度の脅しに屈したなんて知られたら、それこそいい笑い者よ」
華琳は、毅然と言い放つ。
「脅しかどうか、試してみるか?……稟、良いな?」
「はい。歳三様とならば、それもまた本望です」
その言葉に、周囲の兵が色めき立つ。
「待ちなさい、手出しは無用よ」
「し、しかし曹操様!」
「……私の命が聞けないのかしら?」
華琳が声を抑えると、兵士は慌てて口を噤んだ。
ふむ、気迫だけで皆を黙らせるか……流石は乱世の奸雄だな。
「歳三、郭嘉。……私が、そんな愚かしい真似を許す筈ないでしょう?」
「そうか。ならば第三の選択肢だな。我らと洛陽まで同道する……それなら例外を許す訳でも、騒ぎが起こる訳でもないな」
華琳は、ジッと私を睨み付けている。
……ふむ、怒りで我を忘れないのは流石だな。
「歳三。……最初から、その選択肢しか選びようがない事をわかって言ったわね?」
「さて、何の事かな。私はただ、当たり前の事を述べたまでだが?」
「……いいでしょう、軍への同行を認めましょう」
「そうか。ならば宜しく頼む」
「良く言うわね。ま、今日のところは貴方の大胆不敵さに敬意を表しておくわ」
華琳相手の賭け、どうやら上手く行ったらしいな。
……尤も、二度とは使えぬ手ではあるが、な。
軍は、粛々と西へと進む。
陳留から洛陽は、指呼の距離。
今向かえば、愛紗らに合流するには丁度良い感じだ。
他の兵らと共に行くつもりであったが、華琳がそれを許さず、私と稟は馬上にあった。
華琳の矜持、という奴であろう。
「歳三」
「何だ、華琳?」
「洛陽までの道中、退屈でしょう?」
「そんな事はないが」
……あの笑顔は、何か企んでいるな。
「これに目を通しておいて」
そう言いながら、一本の竹簡を差し出す。
「これは?」
「ま、読んでのお楽しみよ。洛陽に着くまでに、意見を聞かせて欲しいの」
「何やら重要な書のようだが。私が見ても良いのか?」
「ええ。郭嘉に見せても構わないわよ?」
「良かろう。では預かるとする」
「それから、明朝、私の処に来なさい」
「明朝?」
「そうよ。いいわね?」
「それも、明朝のお楽しみ、という訳か?」
「ご明察。じゃ、いいわね?」
どうやら、今度は選択の余地はないようだ。
……ならば、何を企んでいるか、確かめるのも一興か。
その夜。
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