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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第24話 芯念
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きない。

 薄明計画が何故すんなり通ったかの裏側が薄らと見えてくる。
 五摂家の内三家の連立、これで武家社会の意思統一は表面上ではあるが成ったも同然。
 其処で京都の二大英雄たる嵩宰恭子・斑鳩崇継が当主を務める派閥、しかも戦術機開発に於いて絶大の威光を持つ篁は嵩宰の譜代家臣であり血も入っている。

 更に、二人はあの武御雷の初実戦を完遂させた実績もある。
 つまり、斯衛の正面装備選定に関する発言力は非常に大きなものとなる、比類なき程に。


「――概ねその通りよ。付け加えるなら、唯依と婚姻させた者に当主を譲れと圧力を掛ければそれは其の儘斑鳩が九條・斉御司に付いたという風に意味合いを自在に変えることが可能。
 つまり、政局は斑鳩家が決定権を持ったという事―――札で云えばジョーカーを手に入れたも同然の一手よ。」  


 単純に斑鳩家の人間が嵩宰あるいは煌武院のモノと姻戚を関係となるという事は、中立である斑鳩家が其方側に着いたと見れるが、それだけでは弱い。
 この問題の鍵は女性当主だ。
 時期女性当主となる事が決定となっている唯依を番わせる事で、それは斑鳩家が女性当主を容認したという言外の告知へと至る。
 そして、中立であるが故にその発言を翻す事で容易に勢力図を塗り替えることが出来る――何故なら、斑鳩家は斑鳩崇継が当主である事からも分かるように、男の当主を上げているからだ。

 一度きりの手段ではあるが実にそつがない。
 何度も繰り返すと虚言とみられるか、双方からそっぽを向かれるため平時では愚行以外の何者でもないが、今のような亡国間際の状態では最大級の効果を発揮する一手だ。

 しかも一度しか使わないのならその効果は絶大。マキャベリの君主論の上手な残虐の使い方と同じだ。

「昔から、崇継が虚言を弄したこともなければ、それが杜撰だったこともない。
 之ほどのジョーカー、敢えて切らないという選択で状況を自分の思う通りに動かしている……正直に言って時々、彼が怖くなる。」

 果たして、それだけだろうか。
 そんな疑念が脳裏に引っかかる。あの斑鳩崇継はこんな無難な手ばかりを打つような人間だったか、という事だ。

 政治には必ず敵だけに非ず味方にも大なり小なりの犠牲を強いる。誰も犠牲にせず前には絶対に進めない。
 理想は所詮は絵空事に過ぎず、理想では現実は回らない―――あのヘラヘラした態度も意図して作ったものだろう。

(―――へらへらするのも大変そうだな。)

 脳裏に浮かんだ柔和な笑みに一瞬心の青筋を立てるが、あれが意外に子供っぽく純粋である事は薄々感づいている。
 未来予知に近い程に鍛え上げた五感や洞察力を以てしても―――邪気を全くと言っていいほど感じないのだ。


 ―――力は不平等に
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