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夜の住人
2部分:第二章
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第二章

「一人もいなくなるなぞ。有り得ない」
「まさか魔物が」
「それかもな」
 遂にそこに話がいった。
「そうでなくては。誰もいなくなるなぞ」
「皆魔界へ連れ去られたのでしょうか」
「だとすれば恐ろしいことだ」
 ヴィーラントの顔が強張ったものから恐怖を感じさせるものとなった。
「まさかとは思うが」
「しかし誰もいないというのは」
「人一人いどころか犬や猫の類さえおらぬ」
「やはりこれは何かあります」
 ゴッドフリートは怯える顔でこう述べた。
「ここは」
「戻れというのか?」
「私はそう思います」
 ゴッドフリートは静かにそう述べた。
「下手をすると我々まで」
「いや、待て」
 だがヴィーラントはここでこう述べた。
「といいますと」
「まだそれには及ばないのではないのか」
「戻るにはですか」
「そうだ、確かに今戻れば安全だ」
「はい」
「だが。私には騎士としての責務がある」
 彼は強い声でゴッドフリートに対して言った。
「詳しいことを調べておきたいのだ」
「この城と村のですね」
「やはりおかしい。だがそこには必ず何かがある」
 彼は言う。
「その何かを調べてそれを陛下にお伝えしたいのだ」
 皇帝に仕える者としての義務であった。彼は皇帝直属の騎士であり深い忠誠心を持っていた。彼は今それに従ったのである。
「よいな、それで」
「旦那様がそう仰るのなら」
 ゴッドフリートには異論はなかった。ヴィーラントが皇帝に仕えているように彼もまたヴィーラントに仕えているからだ。それは最早友情に近いものがある。今それを自覚したのであった。
「私も」
「済まぬな」
「何、いいことですよ」
 彼はにこりと笑って言葉を返した。
「ではとりあえず城からは離れましょう」
「そうだな」
「村からも。離れた場所から見るべきです」
「では森に入るか」
「そうですね。入り口の辺りに野苺が一杯ありましたし」
「今日はそれを食べながらだな」
「ええ」
 こうして二人は城を出て村を離れた。そして城と村がそれぞれよく見える森の入り口に来た。そこで夕食となる野苺を食べながら城と村を見ていた。
「とりあえず昼は何もなかった」
「はい」
 ゴッドフリートはヴィーラントに応えた。
「それで今夕刻だが」
 空が赤くなってきていた。もう太陽は森の木々の中に隠れて見えなくなってしまっていた。
「夜まで見てみますか」
「夜か」
「はい、夜になれば何かわかるかも」
「そうなったらここにいるのも危ないしな」
 ヴィーラントは森の奥に目をやって言った。
「森はな」
「はい」
 ゴッドフリートもそれに頷く。
 森はこの時代のヨーロッパにおいては異世界であった。悪事を働いた者が逃げるのも森であった
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